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いよいよモーニングビジネススクールも最終回です。このモーニングビジネススクールの放送の終わりとともに、私自身も来年3月で、九州大学を退職することになります。 そこで、実際に来年の春から本格的に取り組むことでもありますが、「人生100年時代の生き方と社会の活性化」という話をさせていただきます。 「人生100年時代の生き方と社会の活性化」というのは、高齢化が進む中でも社会は活性化していくということです。国連による2023年版の「世界幸福度報告書」によると、日本人の幸福度は世界で47位でした。これでも昨年の54位から7位上がっています。皆さんは、この結果をどう思われますか。低いと思われますか?確かにあまり自分が幸せだなと日々実感するわけではないですが、それにしても世界的に見て、こんなに低いのです。 もちろん統計の取り方や解釈にもよるとは思いますし、感じ方の違いもあるでしょう。ただ、人生100年時代で、私たちが90代までは当たり前に生きることになったとして、「まだまだ時間があるので、やりたいことができるのは楽しみ」とポジティブに考える人と、「長生きするのは良いけれど先々の生活が不安」と考える人と、どちらが多いと思いでしょうか?恐らく不安に感じる人も少なくないでしょう。何年か前に、年金だけでは老後に2千万円足りないという話もありました。実際に日本の9割の企業や組織では、退職年齢は60歳です。そうなると年金が支給される65歳まででさえ、仕事を探して、その間を繋ぐ必要があります。 そして、人生100年と考えると、60歳や65歳の年齢でも、まだ3分の1が残っているということになります。そこに不安を感じると、幸福度が低いのは当然ではないでしょうか。 一方で、少子高齢化で、日本の人口全体だけではなく、生産人口が大幅に減少することになります。そのために社会的な負担が増し、日本の国力も落ちることが心配されています。多くの人たちが退職する中で、人手が足りなくなるという現象です。そうであれば、退職するシニアの能力活用によって、個人の不安と社会の課題の両方の解消に向けて、大きく転換させられないかということになります。 2018年11月号のハーバード・ビジネスレビューに、「シニア世代を競争優位の源泉に変える」という論文がありました。高齢者を一括りにして、組織や社会に負担という先入観を捨てると、シニアの持つ豊富な知識や経験、調整能力は、組織の優位性にも繋がるという、とても心強い論文でした。但し、シニアが働きやすい勤務体制や環境を整えることが、前提になるということです。もちろん現役時代と同じ体力や持久力を期待するわけにはいきませんが、様々な形でその能力を活かすことはできるのではないかということです。労働力としての人材不足の解消だけではなく、適切な仕組みを作ることで、シニアの能力を前向きに活かすことができるということです。 『Life Shift 100年時代の人生戦略』の著者のリンダ・グラットンさんらも書かれていたことですが、今までの生き方が、「教育と就労と引退後」の3つの段階で構成されていたとすれば、これからのモデルは、マルチ・ステージ、複数の段階になっていくとのことです。現在の60歳や65歳は、昔に比べればはるかに健康なのではないでしょうか。そのように考えれば、まだまだ次、またその次と活躍できる場はあるとも言えます。いまその実現に向けて、いろいろと企画をしています。意識転換の研修、仕事の創造、働く枠組みづくり、地域活動の開拓など、5つくらいの内容です。単に就労を支援するのではなく、研修・仕事づくり・枠組みづくり・地域活動を行います。まだ試行錯誤の部分も多いのですが、このような多様なアプローチが必要と感じています。例えば、シニアが働くには、企業も本人の意識も変わる・変える必要がありますので、研修がとても重要だと思います。もちろん今まで培った知見が重要なのは間違いありませんが、今までの仕事や役職とは一旦切り離さないと、次の段階には入りにくいと思います。その他、新しい仕事や働き方の枠組みを創造することや、経験を地域や市民活動で活かすことなどを考えています。 これらの活動を通して、人と社会の活性化に繋げ、福岡から優れたビジネスモデルを発信することで、全国各地でそのモデルが模倣され導入されれば、これから先の不安が、これからの楽しみに変えられると信じています。「やりがいのある仕事、充実した日々、生きがいのある人生」が実現できた時に、日本の幸福度も、少しずつ上がっていくのではないかと期待しています。 QTnetモーニングビジネススクールも、今日のこの放送をもって終わりになります。九州大学ビジネススクールが設立されたのは、今から20年前の2003年4月でした。そしてこの番組モーニングビジネススクールは、2006年5月29日に、私が担当して「ビジネス・スクールとは何か」をお話しさせていただいたのが、最初の放送だったようです。今まで国際経営と国際ロジスティクスに関して、17年間で300以上のお話をさせていただきました。 番組を始めた頃は、九州で初めてのビジネススクールとして、まだまだ認知度があるとは言えない時期でしたので、みなさんにその存在を知っていただく上でも大変に有効でした。そして、何よりも国内のビジネススクールとしては、唯一教員がメディアを通じて、自分の研究を説明させていただいていたことになります。 この放送にあたっては、本当に多くの方々にお世話になりました。17年間スポンサーとして、このような貴重な機会をいただいたQTnetのみなさん、常に支えていただいたエフエム福岡の方々や、リスナーのみなさんに、心から感謝いたします。 今日のまとめ:人生100年時代にあって、シニアの能力活用によって、労働人口の減少や社会課題解決に繋げて、社会の活性化を目指すこと。
<計画よりもまず行動> 新規事業を立ち上げる際には、事業計画(書類)を作成しなければならない。ただ、事業が革新的であればあるほど、過去の成功経験が通用しなかったり、必要な情報が手に入らないことも多い。わからないことだらけなのだ。こんな状況で、単に「一見理路整然と、それっぽく書き上げた」書類にはほとんど意味はない。 従って、アイデアを思いついたら、小さくても良いから素早く実行してみて、そこで得られた結果から更に良い方向に進める方法を考えて試す、という試行錯誤のサイクルを速くことにこそ価値がある。 PDCAループは、PではなくDからスタートし、その結果をCheckしてPlanにフィードバックするActionを大切にするループとして回すほうが重要だ。 <自分独自のものの見方や考えを持つ> なにかの解決策を導き出すときに、物事を論理立てて考える「ロジカル思考(ロジカル・シンキング)」や、ユーザーの隠れた問題を観察して発見し解決する「デザイン思考(デザイン・シンキング)」が知られている。これはこれで重要だが、それらの手法を駆使してもなお答えが見つからないことも多い。結局、答えは「自分の中」にしかなかったりする。 これからの世の中は、ますます多種多様な情報や製品で溢れかえり、単純な正解がない世界が広がっている。だからこそ、自分なりの「ものの見方・考え」を持つ訓練がとても大切になる。近年は、アーチストが持っているユニークなものの見方をヒントに自由に思考する「アート思考」も注目されている。 自分独自のものの見方や考えを持って山を登って初めて、他に誰もいない頂上から自分だけの新しい景色が見える。 <ネガティブ・ケイパビリティを発揮する> 人間は、様々な社会の状況や自然現象、自分の苦悩の理由を分かろうとする「ポジティブ・ケイパビリティ」と、どうにも答えの出ない、対処しようもない事態に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」の両方を持つ。近年はSNSで瞬時に他人の考えや活動を知ることが出来るので、「ポジティブ・ケイパビリティ」に依存してしまい、拙速で安易な答えに飛びついて満足してしまったり、マニュアル思考に陥ってしまったりする。これは問題の本質に辿り着かず、解決した気になるだけなので問題だ。 従って、ネガティブ・ケイパビリティを発揮して、答えが出ない状況に耐える力を持たねばならない。そのためには、好奇心を持ち続けること、怒りや悲しみといった持続性のある感情を大切にすること、少数派であることを厭わないこと、などが重要となる。 忙しい毎日に押し流されず、簡単に答えが出ない状況に耐える力を持ち、時間をかけて粘り強く自分の問題意識に向き合うことに敢えて時間を割いてみてはどうだろうか。
今日は最初にグローカルという話をします。Think Global、Act Localという言葉です。放っておくと自分の周りしか見ないで、世界の問題を解決しようという人が出てきてしまい、それは良くないです。Think Globalというのは、世界で起こっていることをそれなりに把握しないと、自分だけではなくて自分の会社の従業員やその家族も困ったことになります。世の中で何が起こるか把握しておかないといけません。それをThink Globalと言います。だからといって世界の問題を自分で解決できるわけがない。Act Localというのは、自分はどうしよう、自分の会社をどうしようと、自分が出来るところでなんとかするということです。ということで、最初にThink Global、Act Localでいかないといけないという話をしてから今日のテーマに移ります。 まず一つ目が米中対立の話です。ソ連が崩壊して以降、アメリカが唯一の超大国でした。30数年で中国がどんどん大きくなって購買力平価でアメリカを超えました。そういう意味ではアメリカと中国が二大超大国の時代に入っています。日本はどうするべきかですが、日本は自由民主主義で、どちらかというと中国よりもアメリカの核の傘の下に入っているということもあり、アメリカの味方をするということですが、中国があまりに大きくなってしまったので、日本企業が中国を撤退することは無理です。工場だけでなくて顧客のいる市場になってしまったからです。そういう意味では中国と戦争する、中国から撤退するというのは無理です。 アメリカはデ・カップリングと言っていました。デ・カップリングというのはアメリカのサプライチェーンと中国のサプライチェーンを分離して、中国に関わらないでアメリカとその友人たちのサプライチェーンだけでやっていこうということです。それは日本企業からしてみれば中国から撤退して、アメリカを中心とするサプライチェーンのみに参加してくれという話です。ところが、日本企業は少し嫌で、EUのヨーロッパ企業も嫌で、アメリカの多国籍企業も嫌でした。アメリカに対してなかなか面と向かって嫌だと言いにくかったので、この間EUがデ・カップリングではなくて、デ・リスキリングでしょうと言ってくれたので、日本はラッキーと内心思っていました。デ・リスキングというのは、リスクをできるだけ回避しましょうという意味です。サプライチェーンを分離するというのはもう無理だということを正面から認めて、出来るだけリスクを回避するということで頑張りましょうという話になっています。 次に、AIや生成AIの話です。今、ホワイトカラーがやる仕事が段々減ってきて、生成AIで更に仕事をとられてしまうのが加速するということが起こりつつあります。今まで日本の企業では個人主義というのはあまりありませんでした。共同体で稟議制で意思決定しましょうというものでした。誰かが稟議を書いて皆で意思決定をするということで、実行するのは他の国と比べてもすごく信頼がおけるといういいところはありますが、なんだか遅い、誰が決めて責任をとらないといけないのかわからないという面もあります。生成AIでかなりの人がこれから仕事を失うということがおき始めていて、そうすると人間が仕事をし続けるためにはどうしたらいいかと、AIに負けないような付加価値を提供できる専門家にならないといけないという状況になっています。ところが今まで日本企業は3年ローテーションで何でもできる人にしましょう、銀行でいうとまず支店長を目指しましょうということをやっていました。ところが、AIに出来ないような付加価値を提供する専門家は3年では出来ません。そうすると、複線化人事と言って、今までみたいなジェネラル・マネージャー、なんでもできる人をゆっくり育てるというような話だけではなくて、AIが出来ないような付加価値を提供できる専門家を長い時間をかけて育てるというような時代にならないといけないという話になっています。 私が40年ほど前にアメリカのメロン銀行というピッツバーグの銀行で働いていた頃、人事部でなくて本人がキャリアを企画する制度は既にありました。3か月毎にオープニングジョブリストが回ってきて、もしやりたいことがあったら3年今の自分のところでやっていれば手を挙げて下さい、もし我々の方で欲しいということになれば認めますと。要するに人事じゃなくて、本人がキャリアプランを作ってそれを実行していくというのがアメリカやイギリスのキャリアプランです。ところが日本というのは、職業選択の自由、どこの会社に入ろうかというところは自由ですが、入った後のキャリアは人事が思うように決めていくため、本人がこれをやりたいと決めていくということは起こらないわけです。しかし、生成AIが導入されて付加価値を提供できる専門家を作らないといけないという話において、誰が作るのかというと人事部が本人のやりたくないことを長期間強制して専門家にするのは無理で本人が希望してならなければなりません。そういう意味では、終身雇用で一つの企業で皆がジェネラル・マネージャーをめざすのではなくて、たくさん転職してもずっと同じことをやり続けて何かの専門家になる、AIの提供できない付加価値を提供できるというよう専門家も認める人事制度がこれからは求められていくということになると思います。 日本国憲法第13条は憲法の中の最高規範と言われていますが、個人を尊重して、個人が自由に幸福を追求することが出来る。公共の福祉が妨げられない限り、個人は自由に幸福を追求していいと書かれています。ところが憲法で書いただけで実際はそうなっていません。日本は共同体主義で、個人の自由は非難されてきました。今世の中変わろうとしています。自分の幸せは、自分で追及しなければなりません。自分でどのように自分の幸福が変動してきたか、自分の価値体系はどのように出来ているかということを把握したうえで、自分のキャリアプランを自分で作っていくということが求められています。
今回は、「大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか」というトークテーマをいただいています。このテーマについて専門分野の視点からお話しすることになっている訳ですが、正直に申し上げると、非常にテーマが大きいために、何をお話ししたものか考えあぐねていました。しかし、ともかく、このテーマに表れている問いに対する私自身の違和感から話し始めてみようと思います。 まず「私たちは大きな転換期を迎えている」という認識は、今に始まったものではなく、おそらく歴史上のどの時点でも、その時代を生きた人々に持たれていたのではないかということです。どの時代にも、その時代なりの困難というものがあり、その困難さを強く意識する人々によって、今こそこれまでの生き方、働き方を変えなければならない「転換期」を迎えているのだと認識されてきたのではないかと思います。それぞれの時代の困難には、他の時代状況とは異なる固有性が認められるでしょうが、一方では、その質において互いに類似した性質を持つ時代を見出すこともできる筈です。そう考えると、自分たちの直面している困難の重大さを特権化して、今こそが大きな転換期であるとする意識は薄れてくるのではないでしょうか。 私が、こういうトークテーマに水を差すようなことを言うのは、現状の困難さを誇大に宣伝して危機感を煽るようなことは、学者が最も慎むべき行為だと思っているからです。無論、自然現象であれ社会現象であれ、学者は自らの研究対象に何らかの重大な変化の兆候を発見することがあれば、それをいち早く社会の構成メンバーに伝えて、必要な行動を促すべきです。しかし、それが重要な義務であればこそ、さしたる根拠もなく徒に社会的な注目を集めるような言辞を弄んではならないと思うのです。そうでなければ、学者が本当に重大な危機の兆候に気づいた時に警鐘を鳴らしても、社会に信用してもらえなくなるでしょう。 例えば、近年の状況を、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ぶ人たちがいます。VUCAという語は1990年代に米国で生まれた軍事用語として知られていますが、それが近年ではビジネスを取り巻く予測困難な状況を表す言葉として使われている訳です。実際、このような言葉は、新型コロナウィルス、激甚災害の多発、ロシアのウクライナ侵攻といった予測困難な要因が経営環境を変動させてきた状況を経験した企業にとって受け入れ易いのかも知れません。しかし、こうした環境変化を「VUCAの時代」などと呼んでみたところで、困難の本質が見えてくるわけでもありませんし、せいぜい情報収集能力を高め、迅速な意思決定を行うことがこれまで以上に重要だという程度の凡庸な結論が導き出されるだけでしょう。 ただ、実際に現在、自らの関わっている企業経営が何らかの事情で転換期を迎えていると認識されている経営者やビジネスパーソンはおられる訳です。そうした認識をお持ちの方々のご参考に供するためは、今日の日本企業が直面している一般的な経営課題とその解決策についてお話しすると良いのかも知れませんが、既に私は最近の放送の中で、日本的経営を再検討する視点から、その点については論じたことがあります。そこで、今回は私がお話しする最後の機会でもありますから、いま切実な苦境に立たされている経営者やビジネスパーソンを想定して、一般的な経営課題ではなく、目の前の苦境を乗り越えていただくために、私が最低限申し上げられることを申し上げてみたいと思います。 まず、先にも述べたように、どれほど困難な経営環境に思われても、大抵の状況は長い歴史の中で見れば、既に私たちの社会が少なくとも一度は経験しているものだと言うことです。従って、かつて同じような困難に直面した人々が、その状況とどのように対決し、どのような教訓を残したのかを振り返ることによって、今日の困難を乗り越えるための手掛かりが得られる筈です。経営学を含む社会科学という学問は経験科学ですから、そのような手掛かりを、経験的なデータに基づいて提示することはできる筈だということです。 また、どれほど困難に思われる状況でも、それを歴史的な時間の中において見れば、必ず終わりが見えるということ、終わりのない夜はないということです。長く続いた新型コロナウィルスのパンデミックにも、私たちは漸く出口を見出しました。この経験を忘れずにいることは、現在の苦境を乗り越え、将来に向かって生き抜く上で重要かと思います。ともかくも生きて、皆さんの経験を将来に繋いでくださいと、申し上げたいのです。 そして、少し時間的に余裕があれば、皆さんの苦境を歴史的な時間の中で相対化し、その経験を科学するための方法を学ぶために、大学という場にいらしてみてください。そこで私が皆さんにお会いすることがあれば、「VUCAの時代」などという聞いた風なことは決して言いません。ただ、もう還暦を過ぎた年寄りですから、「心配なさるな。お前様、それはな、実は昔もあったことなのじゃよ」という言葉遣いで、話を始められるようにしたいと思います。
今日は私が考える「私たちは、これからの未来をどう生き抜くか。」についてお話ししてみたいと思います。私のキーワードは、「自分らしさ」です。 リスナーの皆さんの「自分らしさ」って、何でしょうか?すぐに答えが出る方もいらっしゃると思いますが、「ちょっと待てよ。そんなこと急に言われても」と戸惑う方も少なくないのではないかと思います。この質問を企業に勤めるビジネスパーソンにお聞きすると、実は口ごもる人が少なくありません。なぜでしょうか。 実は、会社組織では「自分らしさ」を発揮することが求められていないからです。「自分らしさ」を発揮するのではなく、例えばマニュアルや規則に書いてあることをしっかり守ることが求められます。会社の期待通りに行動することが求められるわけです。その結果、職場では、「自分らしさ」を考えることや、ましてや「自分らしさ」を発揮する機会は本当に少なくなってしまいます。この意味で、組織というのは大変怖い側面を持っています。「朱に交われば赤くなる」というわけです。 皆さんが何か新しい企画を考える機会があったとしましょう。新しい企画なので、自由な発想で自分らしい企画を考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。上司や周りの同僚が納得するような案を考えることが求められるからです。社内から異論・反論が起きないような答え、言ってみれば無難で、誰もが「確かにそうだよな」という企画案こそが、「良い」企画案とされてきました。そうした案を早く作ることができる人間が「できるヤツ」と言われてきました。そうした「良い案」を作らなければならないので、「自分らしさ」を考える暇などあるわけがありません。つまり会社には、「自分らしさ」を忘れさせる力が動いているといってもよいと思います。多くのビジネスパーソンが口ごもるのは、このようなわけがあるからです。 さて、今日なぜこの話をしているかというと、これからの時代は、これまでとは大きく状況が変わって、「自分らしさ」がとても大切になると思っているからです。 最近、新しいAIである、ChatGPTが大変話題になっています。皆さんの中にも使ったことがある方もいらっしゃると思います。ChatGPTは世界中の情報を集めて、論理的に分析した結果をわかりやすい日本語でアウトプットしてくれます。ChatGPTの強みを一言でいうと、誰もが納得する答えを出す力と言ってもよいと思います。そして、これからの時代は、誰もがこうしたAIの力を自由に使えるようになります。そうすると、これまで会社で求められてきた誰もが納得する企画案は、AIが作ってくれるようになるのです。 では、一体人間は何をすればよいのでしょうか。これを考えるためには、AIにはできないことを考えることが一番です。AIにはできないこととは何でしょうか?AIはなんでもできてしまいそうですが、実はAIは企画を作ったり、回答を出すことはできますが、それを実行したり、実現することはできません。 例えば、これからの外食産業を勝ち抜いていくためには、こういったカフェがよいだろう、という答えをAIは出すことはできますが、カフェを実際に作り上げていくのは誰でしょうか?それは人間です。そして、カフェを創るためには、多くの人がかかわってきます。デザイナーもいれば、食材の専門家もいる、スタッフの募集をしたりお金の計算をする人も必要です。みんな仕事の進め方も、ひょっとすると考え方自体も異なるかもしれません。そういった多様な人たちをまとめて、一つのカフェを創っていく。それは、実は簡単なことではないのです。 それではいったい何が必要なのでしょうか?それはリーダーシップです。考え方も、そして、ひょっとすると生き方も異なる人たちと一緒に、目指すものを作り上げていく力、これがリーダーシップです。具体的には何を目指していくのか、そしてそれは何故なのかを語っていくこと、この場合だと、どんなカフェを創りたいのか、そしてそれはなぜなのかを自分の言葉で語りかけ、多くの人たちのやる気のスイッチを押していくことが必要です。言葉をかえると共感を生み出す力と言ってもよいと思います。「そうか、この人がそういうのであれば、一肌脱いで頑張ってみるか。」を思わせることがとても重要になるのです。 よくリーダーシップというと、古くはキング牧師、最近ではスティーブ・ジョブスやイーロン・マスクのようなカリスマ性があって、かっこよくてパフォーマンスが上手な人を思い浮かべてしまうのですが、実はこうした人たちだけがリーダーシップの見本ではありません。例えば、インドを率いたガンジーや多くの弱き人たちを救ったマザーテレサなども素晴らしいリーダーです。雄弁でも何でもない、派手なパフォーマンスとは無縁の人です。彼・彼女がしたことは、自分が何を目指すのか、それはなぜなのか、そして自分はどんなことを大切にしていきたいのかを自分の言葉で多くの人に語り掛けたことです。それは、彼・彼女の「自分らしさ」そのもの、「自分らしさ」の本質といってもよいと思います。自分がどんなことを大切にし、自分が心から成し遂げたいと思うことは何か、それを自分の言葉で語ることを通じて、何千・何万という人の心に共感を生み出していったのです。 リーダーシップとは、「自分らしさ」を発揮することです。これは、AIにはできません。AIが作った文章を読んだことがある方はお気づきのとおり、AIの文章には感動がないのです。心が動かないのです。共感しないのです。これからの時代、我々人間にしかできないこと、すなわち多くの人に共感を生み出すために、是非「自分らしさ」を大事にして欲しいと思います。 今日のまとめ: これからの未来を生き抜いていくために大切なこと。それは、「自分らしさ」です。皆さんの「自分らしさ」を、今一度見つめなおす機会になれば嬉しいです。
テーマに対する私の考えは、「組織の中に様々な国の人を受け入れて、一緒に働いて、議論をすることを通して、グローバルスタンダードな自己主張、リーダーの振る舞いを学んでいく」というものです。なぜそう考えるのかを順を追って説明します。 欧米、特にアメリカには「竹の天井(bamboo ceiling)」という言葉があります。欧米社会、特にアメリカ企業では、アジア系がリーダーに昇進しにくいという状況を表す言葉だそうです。少子高齢化が進んで、日本企業も日本人も、これからはどんどん海外で活動していかないといけないのに、アジア系が出世出来ない「竹の天井」があるというのは、困った問題です。 でも一口にアジア系といっても「竹の天井」によって出世が出来ないのは、東アジア系、つまり、日本・韓国・中国の人材だという事も、ごく最近分かってきました。 マイクロソフト・Google・スターバックス・シャネル・フェデックス、これらの企業に共通する特徴は何でしょうか。上場しているとか、世界でかなりの利益を出しているといった共通点はありますが、これらの企業のトップ(CEO)は、インド出身者です。マイクロソフトのCEO、GoogleのCEOがインド出身者というのは、最近ではかなり有名です。でも、アメリカンなイメージが強いスターバックス、フランスの高級ブランドのシャネルも、リーダーはインド出身者です。 アメリカの企業の中でも特に格付けの高い、スタンダード&プアーズ500社の過去8年間のCEOを調査した研究がありますが、インド系がCEOになる確率は、白人よりも高いそうです。ただその一方で、同じアジア系でも東アジア、つまり、日本・韓国・中国の東アジア系がCEOになる確率は、白人よりも低いそうです。 しかし、人的資本という観点では、アジア系は白人を上回っているということは、結構以前から知られています。アジア系は学歴が高い、所得水準が高い、失業率が低い、犯罪率が低いなど、アジア系の人々が優秀であることは、様々な調査で明らかになっています。でも、リーダーにはこれまで白人が選ばれてきました。ただし、最近はインド系のリーダー達の活躍もめざましいのです。ではなぜ、東アジア系だけがリーダーになりにくいのか。マサチューセッツ工科大学(MIT)のジャクソン・ルー助教授が詳しく調べています。どうしてだと思いますか。 ジャクソン・ルー先生達は、英語の流暢さには差が出ないような工夫をして調査をしています。つまり英語力以外の3つの要因を見ています。まず「偏見」、つまり民族差別です。これに注目しました。分析の結果、何とインド系は東アジア系よりも強い偏見を受けているという事が明らかになりました。多くの白人達は、インド系に偏見を持っているにもかかわらず、リーダーを選ぶ際には、東アジア系よりも、インド系を支持するということも分かりました。次に注目した第2の要素が「モチベーション」。つまり出来るだけ一生懸命働こうとするかということです。こういった仕事への意欲を調べたところ、東アジア系とインド系には、差が無いという事が分かりました。最後に注目したのが「自己主張」。これが大きく違っていました。「適切な時には自分の意見を述べ、みんなと共有する」とか、「意見の対立が起こった時には、進んでそれに関与する」とか、「激しい対立の中でも自分の立場を貫く事が出来る」といった質問に対して、インド系の人材は「はい」と答える人が多かったのに対して、東アジア系はそうでもありませんでした。きっと東アジアの我々は空気を読んでしまうのだと思います。 これは、日本初のイノベーションをこれからどんどん世界へ広げていく上では大変困った問題です。なぜならば、イノベーション、特に将来大きな価値を生む画期的なイノベーションのためには、今のやり方を根本から変える必要があるからです。でもそんな事をすると、当然組織の中で反発が生まれます。そこで空気を読んだり、譲ったりしたりはいけないのです。自己主張をしなくてはいけない。そして、上手に自己主張をするためには、相手を傷つけないような反論や、ディベートの作法を学ばなければならないでしょう。 今日のまとめ: これからの未来をどう生き抜くか、私の考えは、組織の中に様々な国の人を受け入れて、一緒に働いて議論する事を通して、グローバルスタンダードな自己主張やリーダーの振る舞いを学んでいくです。グローバル世界でリーダーになるためには、上手な自己主張を身につけなくてはいけません。これが私の答えです。
今回は、大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くかというテーマで話します。転換期にあるということなので、今後どう我々が生き抜いていくべきか中々将来見通せません。そうした中で、どういうふうに我々が進んでいくかということですが、ポイントが2つあると思います。 一つ目のポイントは我々よく知の深化と言うものです。掘り下げて深めるという意味の深化です。簡単に言うと、得意を伸ばすこと、やはり得意分野を持っている方や組織は強いと思います。例えば、日本のものづくりを源流とするリーン生産方式というものがあります。リーンというのは無駄を排した贅肉のないという意味です。ですので、例えば生産過程において余計な在庫を持ちすぎず、お客さまからの注文に対して滞りなく生産を回していくような生産システムのことをいいます。このデジタルの時代において、データから情報を引き出して生産の流れを制御する上ではリーン生産方式は非常に有効に機能すると私は考えています。ただ得意を伸ばす上で重要なポイントがありまして、それは得意とすることの根底にある本質を見極めることです。先程申し上げた日本の生産システムでいいますと、例えば、「かんばん」とか「かいぜん」とか「あんどん」といった言葉は既に英語化しているといっても過言ではないほど海外で通じます。但し「かんばん」にしても「あんどん」にしても生産管理するための手段に過ぎません。日本のものづくりの根底にあるのは生産の上流から下流に向かって付加価値を生むようなスムーズな流れをつくっていくことにあります。ですので「かんばん」や「あんどん」というのは手段に過ぎないわけですからそれそのものはどんどん変わっていきます。ただ一方で、スムーズな流れを作り込んでいくという本質自体はそうそう変わるものではありませんので、我々が伸ばすべきなのはその強みの本質となるスムーズな流れづくりという部分にあります。 もう一つのポイントは、得意を伸ばすということは重要ですが、一方で今得意なことにこだわりすぎるのもあまりよくない、そこで今後生き抜く上での第二のポイントとなるのが得意分野以外に目を向けていくことです。これ言いかえますと、知の探索というものです。新しい分野にこの知識を広げていこうという姿勢です。現在の経営学では得意を伸ばすこと、すなわち知の深化と、新たな可能性を探ること、すなわち知の探索、この両立を図ることが重要だと考えています。これをいわゆる両利きの経営といいます。 但し、自分の得意分野以外のことも全て自分で勉強して身に付けるというのはものすごく難しいことです。そこで重要となるのが2種類のネットワークです。一つ目はいわゆる社内のネットワークでして、社内には色んな得意分野を持った人達がいます。ですので、自分が不得意なことについてはそれを得意とする人に聴いていけばいいのです。そのときに誰が何を得意としているのか、これを知っていないと誰に助けを求めればいいのか分かりませんので、そこがポイントになってきます。このように誰が何を知っているのかを知っているということを、経営学ではトランザクティブメモリーといいます。このトランザクティブメモリーを上手に発揮していくためには、お互いに見知った関係であるということが重要です。単にメール上だとか、Web上で知っているというだけではなく直接会った経験がある、そういった相手であるほど誰が何を得意としているのかという経験が非常に鮮明になるとこれまでの研究で明らかになっています。 もう一つのネットワークは社外のネットワークです。より広く新たな知識や発想を得る上では普段会っていない他社や他の業界、他の国の人々と交流することが非常に重要になってきます。一つ例を挙げると、いささか古い例ではありますが、トヨタ生産方式の生みの親と言われる大野 耐一さんという方が1956年にアメリカに視察旅行に出かけました。この時のメインの訪問先は当時のゼネラル・モーターズやフォードといったメーカーでした。ところが彼がアメリカで一番強い影響を受けたのはスーパーマーケットだったそうです。スーパーマーケットのセルフ方式をみてトヨタ生産方式の代名詞とも言えるジャストインタイムを思いついたといわれています。全く異業種の取組から革新的なアイデアを着想しましたが、そこで重要になったのがこの大野 耐一さんが物事の本質をずっと問い続けたということです。スーパーの売場と工場の生産現場とは全く違うように見えます。ところが大野 耐一さんはスーパーにおけるセルフサービス販売を見て、これは後工程であるお客さまが前工程である商品棚に自分で商品を取りにいって生産すると、そのように見てとったのです。これは生産管理の用語でいうと後工程引取りといいますが、まさにその様子をスーパーを見て思いついたということで、まさに慧眼というべき観察力です。平時から自分が解くべき課題の本質を問い続けていたからこそ出来たことだと思います。 今日のまとめです。大きな転換期を迎える時代において、今後生き抜く上では第一に得意を伸ばすことが重要です。一方で現在の得意にこだわりすぎると視野狭窄に陥る可能性があります。そこでネットワークを通じ、視野を広げることが重要となります。その際、誰が何を知っているか、何を得意としているかを知るトランザクティブメモリー、これを鍛えることが重要です。また、異なる業界や異なる文化の人々と交流する上では表面的な違いに惑わされず、現象の根底にある本質を見極めることが重要となってきます。
大きな転換期を迎えている今、私たちがこれからの未来をどう生き抜くかというテーマについて、リスクマネジメント、リスク学と学問分野では言いますが、これと企業倫理学の観点からお話していきます。私の研究は企業不祥事、特に産業事故の防止方法、簡単に言えば、企業や社会にとっての災難をどう防ぐかという内容になります。やはり災難を避けたいというのは人間の本来的な願いです。ですので、この研究分野はかなり歴史も長く、今でも多くの方が研究に取り組んでいます。 これだけ長い時間にわたって研究されていると、必然的に分析される企業不祥事や事故のケースというものは、時代の変化とか様々な社会の転換を踏まえたものになっています。例えば、企業不祥事で最近よく聞く代表格といえる個人情報の漏えいなどをみても、時代の変化や社会の転換が色濃く出ています。例えば、かつて個人情報の保護という意識そのものが低かった時代では、そもそも企業から顧客の名簿等が少し流出してしまったくらいでは企業不祥事にすらならなかった時代というものがあります。それが2000年以降、個人情報の保護の意識が高まり、これが企業の不祥事と認識されるようになった2000年代の初期は、この個人情報を会社の内部の人間が記録媒体や名簿そのものを持ち出して不祥事に至るというケースが主流でした。さらに時代が進んで2000年代の紛失や持ち出し事件を受けて、個人情報の保護または管理が厳しくなった2010年以降では、今度は外部から組織的に不正アクセスをして企業の個人情報の漏えい事故が多く発生するという状況になっています。そして、このような外部からの組織的な個人情報の流出を試みたアクセスが行われるようになってから、個人情報の流出する件数もかなり莫大となっています。 何が企業不祥事となるかということも含めて企業不祥事のケースは時代や社会によって変化しているので、どのように気を付ければいいのか、そして、どのようにそれに対応をすればいいのかも変わってくると言えます。ただし、面白い点が1つありまして、このように具体的な事例は異なるものの、不祥事の本質的な要因やメカニズムについては、あまり大きな変化はないのではないかと近年の研究は言っています。実際にほとんど変化がないと指摘する研究者もいます。確かに、過去数十年の企業不祥事の原因や要因を分析して調べてみると、必ず組織風土の問題という言葉やコンプライアンス意識の低さという言葉が時代を問わず出てきます。また、驚くべき事に100年以上前の企業不祥事や産業事故の発生メカニズムとほぼほぼ同じようなメカニズムで発生した現代の企業不祥事や産業事故のケースも少なくありません。例えば、利益の追求を最優先して安全を軽んじて結果として製品事故や産業事故に至るという発生メカニズムを持った企業不祥事のケースは、実は時代や社会を問わず確認する事が出来ます。ですので、やはり人間の本質というものは変わらない。そして、企業不祥事もやはり人間が起こすものなので、その本質的な要因やメカニズムには変化がないと言えるのかもしれません。 では、このような事実から大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くべきかといういただいたテーマにどのような提言が出来るのでしょうか。それは、私は歴史から学ぶという事は我々が想像をしている以上に大きな意義があり、我々はもっと歴史から学ぶべきだという事になるかと思います。歴史から学ぶと聞くと、時代や社会がこんなに変化してしまった現在に、過去を振り返ったところで現在や未来にすべき事を発見する事は出来ないと思う方も多いかもしれません。確かに、過去に成功したやり方を現在そのままコピーして行ったとしても、これはやはり成功するとは限りません。しかし、先ほど述べた通り、過去の企業不祥事や産業事故の発生メカニズムとほぼ同じようなメカニズムや要因で発生した現代の企業不祥事や産業事故のケースが様々にある事を考えると、歴史から学ぶという事をあながち軽んじてはいけないと思います。なので、単純に歴史的事実を知るのではなく、そこから一歩踏み出して歴史的事実の背景にある発生メカニズムやそこにある人間の本質について考えてみる事、私はこれを歴史を知ると区別して、歴史から学ぶと定義していますが、これを行ってそこから現在や未来にすべき事を大胆に想像していく事はやはり大きな意義があると思います。 今日のまとめです。過去の歴史にとらわれる事、これはよくありません。しかし、過去の歴史から学びを得て挑戦していく事、これは大変に重要だと思います。この大きな変化の時代だからこそ、歴史を知ることから一歩踏み出して学んでみましょう。成功も失敗も含めて人が歩んできた道を知り、これから人が歩むべき道を考える糧としましょう。
今回は、大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くかという共通のテーマで話します。マーケティングの観点からいくと、今回のお話の重要なキーワードは、ブランド力と海外展開のこの2つだと考えています。21世紀になってからもう20年以上経ちます。これまでの20年間、世界規模で生活にしても政治経済にしても大きな変化が起こってきました。その間、色々な企業が競争を繰り広げて、新しい技術やサービスが普及してきました。ではクイズを出したいと思います。21世紀になってから、株式市場で最も高いパフォーマンスをあげた企業はどこだと思いますか。ヒントはニューヨーク証券取引所で上場しているアメリカ企業です。実は飲み物をつくっているメーカーで、モンスタービバレッジという米国企業です。モンスター・エナジーというドリンクをつくっている会社です。このモンスター・エナジーをつくっているモンスタービバレッジという会社ですが、カリフォルニア州のコロナという所を拠点としている企業です。この企業は2003年に株式公開して、現在元の値段から11万%も株価が上昇したそうです。これは今世紀に入ってから他の全てのアメリカ企業を上回っているそうです。しかも毎年少なくとも9%以上の売上を伸ばしてきています。エナジードリンクは競合がたくさんあります。レッドブルもありますし、日本だとチルアウトやリポビタンD、そんな競争の中でもお客さんはパーティをしたり元気になりたいと思ったりした時にモンスター・エナジーを選びます。 モンスター・エナジーから少し離れますが、第二次大戦後から同じくニューヨーク証券取引所で50年以上上場を続けている中で業績の良いベスト4の企業があります。それはコカ・コーラとエクソンモービル、あとはクラフト、今のクラフト・ハインツ、レイノルズ、今のブリティッシュ・アメリカンです。これらの長くビジネスを続けてきてかつ多くの利益をもたらしてきた企業には共通点があります。それはモンスター・エナジーと同じく、どの企業もブランド力を磨き続けてきた企業達です。つまり飲み物にしろ、食べ物にしろ、自分達の得意分野に集中して、品質とそれに基づいた消費者からの信頼を高めて消費者に対して確固たるブランドを築き上げてきた企業達です。 ウォーレン・バフェットという投資家の名前を耳にすることがあると思います。最近、日本の5大商社に大きな投資をしてよく報道されている人ですけれど、この人の長年のパートナーを務めたチャーリー・マンガーという伝説的な企業家がいます。このマンガーさんが言うのは、ブランド力のある企業とそうでない企業の違いというのは、他よりも10セント高くてもお客さんが選んでくれるかどうかだということだそうです。これはとても小さな差に見えますがとても重要です。というのも、今までご紹介した企業はブランド力の高さ以外に共通していることがあります。それはどの企業も海外に市場を広げる努力をしてきたということです。先程話した10セントの差、15円の差ですが、金額は確かにほんの僅かです。しかし、海外展開して自分達の商品を販売する市場がどんどん広がれば、そういった僅かな違いが積もり積もって大きな利益の差になっていきます。勿論、海外展開して自分の製品の市場を広げるというのは非常に魅力的な戦略ですが、実際のところ、海外展開は中々難しいです。規制などの法律だけではなくて、文化の違いや、お客さんの購買行動の違いといったものもあります。 しかし、企業が海外進出しようとすることを阻む一番大きな障壁は別のことです。それは、テキサス工科大学のマリアドス教授の研究によれば、一番の障壁は企業側が持つ不安だそうです。つまり、自分の会社の製品が海外では通用しないのではないかという不安と、その結果として自分の国内の市場を過剰に重視してしまうことだそうです。ですので、ある程度のリスクと失敗を覚悟してでも成長するために市場を広げたいという意思が重要になってきます。 今日のまとめです。長い間利益をもたらし続けている企業は品質を守って消費者からの信頼を武器にするというブランド力を磨いてきました。それをベースにして海外進出のように常にビジネスの機会を広げる努力をしてきたということです。これは企業だけではなくて個人にも言えることだと思います。自分の得意なことに集中して、この分野だったらこの人だというような専門性、ブランド力を磨き上げていくということと、ある程度のリスクをとってでも自分の活躍できるマーケットというかチャンスを広げる努力をするということです。大きな時代の転換期を迎えていますが、生き延びていくための一つの有力な方策がこういったマーケティングの視点から学べるのではないかと考えています。
私は今イギリスにいるので、ZOOMで繋いで話をしています。イギリスは湿度が低くて快適です。 今日は「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」というテーマを異文化コミュニケーションという立場からお話します。日本は今、技術的にも組織的にも色々な問題を抱えていますが、私の専門分野である異文化コミュニケーションの立場から、日本の伸びしろを左右出来るのではないかと思っています。「異文化交流の促進」が今後キーワードになるのではないか。日本は土地が狭い島国で資源が乏しいとよく言われます。そういう不利な点を今までカバーしてきたわけですが、昨今は色々と難しいところがある。そこで突破口になるのが、国際化、グローバル化、それを果たす為の異文化交流ではないかなという気がします。 どういうことかというと、イギリスに来て分かるのですが、イギリスは人種的にもそうですし、ビジネス的にも色々な幅があり、日本に帰ってみるとまだまだだなと思う事が多いです。例えばケンブリッジには色々な国の料理屋やスーパーマーケットがあります。韓国系のスーパーマーケットでイギリスの資本でOseyoというところがあって、大きな店構えをしていますが、日本食のスーパーはまだありません。人口10万人程度の町ですからなかなか難しいのかもしれません。そのかわりお寿司屋とかはイギリスの資本でだいぶ作られていますが、日本食はブームだと聞くわりに、日本から乗り込んできている企業は今まであまりありません。 今回コロナ禍が明けて久しぶりにイギリスに来てみたら、大阪資本の杵屋というところが日本風のうどん・お弁当店を出していて、ケンブリッジのように人口が少ない所にも来ているのだなと思いました。ようやく腰が上がったという事でしょうが、まだこれが当り前にはなっていないので、今後は海外展開がキーになるのではないか。そうすると異文化交流というものも鍵になるというストーリーではないか、と思っています。 ではどうしたらいいか、ということですが、一部の人だけ異文化交流が出来ればいいということではなく、山の頂を高くしようとすると、裾野も広くないといけないので、僕らがみんなで異文化交流や外国に対するマインドセットを変えていかないと、掛け声だけではなかなか突破できないと思います。そうすると我々が出て行く時の準備もそうですし、国際化というのは相互ですから、我々が受け入れる為にしないといけないことというのもたくさんあるわけで、そのあたりがどれくらい出来るかが鍵になると思います。 今日は細かいことを言う時間はありませんが、項目だけ挙げると、出て行く側としてはもっと海外に出なさいという話です。海外に出るための学生に出す奨学金を増額すること、あるいは企業が海外研修派遣にもっと力を入れること、企業が語学教育にお金を出すことです。具体的には、最近は多いですが、修学旅行は是非海外に行って、色々な社会見学に使って欲しいです。学生さんが1年ぐらい前から行き先の検討や調査を行い、自分達の手作りで関われるような修学旅行にしていくということから始めたらどうか、という提案です。 今度は住みやすい日本、受け入れ側を作るということですが、これはどうしても日本語が不得手な方々が多いので、最近やさしい日本語で公共交通機関や市役所などが対応していることが多いですけれど、子供達、特に若い方々に来ていただくために、子供を受け入れる保育園の異文化、多言語化というのも力を入れないといけないと思います。小さい頃から刷り込まれれば、色々な人種の方がいて色々な言語をしゃべる人がいるのが当たり前だということが染みつくと思います。特に小さい頃は垣根が無いので、どんどん吸収していきます。あとはお年寄りの方が家族に引き連れられて来日するケースがあるので、日本語を勉強出来るような夜間中学的なものを充実させるという政策も必要になるだろうと思いますし、あるいは女性枠でクォータ制を導入して、たくさん女性を雇用しましょう、ということが進んできていますが、これを外国籍の方についてもクォータ制を考えたらどうだろうかと思います。そうすると当然、一定数入ってきたからには海外展開しないともったいない、という風に歯車が回っていくのではないかという気がします。 最後に、今せっかくイギリスに来ているので、ケンブリッジのお話を少しします。ケンブリッジ研修に参加している学生の様子を見ていると、こちらで晩餐会があり、そこで現地の方々と色々な話をすることがありますが、学生の事ですから非常にたどたどしいし、うまくいくわけではありませんが、結局のところ、コミュニケーションをしようとする意思が大切なんだということです。英語の検定試験的な力を付けるのもいいのですが、マインドセットを先に変えましょう。これを最後に申し上げてサマリーとしたいと思います。
今月のモーニングビジネススクールはスペシャルバージョンです。 「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」という共通のテーマでお話ししています。 テーマが大きいため、具体的に3つ取り上げます。一つは「労働力不足の時代」、もう一つは「人口減少の時代」、そして三つ目は「米中対立の時代」という3つの観点からこのテーマについて考えます。 まず「労働力不足の時代」について考えてみましょう。 この労働力不足の時代に私達はどう生き抜いていったらいいのでしょうか。バブルが崩壊してから日本経済は長期的に低迷していたため、労働力が余り「失業」の問題がありました。ただ、経済が低迷している間にも、大きな変化が少しずつ生じていたわけです。それは「少子高齢化」です。高齢者が長生きするため総人口は減少しませんが、現役世代が減少しています。つまり、使う人は減らないにもかかわらず、作る人が減っていくということがずっと続いていたわけです。10年程前にアベノミクスで景気が回復しましたが、突如労働力が不足するようになりました。景気が回復したといってもそれほど経済成長率が高くなったわけではありません。急に労働力が不足したことで多くの人が驚いたわけです。これは長い間に少しずつ労働力余りが減ってきていたことに誰も気付いていなかったことに加えて、アベノミクスによって突然労働力不足が露呈したためです。その後も景気は一進一退を続けていますが、少子高齢化は着実に進行し、10年前よりさらに労働力が不足しやすい経済になっているわけです。労働力不足は労働者にとっては素晴らしいことです。労働力が足りないわけですから失業してもすぐに次の仕事が見つかりますし、賃金も上がっていくだろうと期待出来るわけです。日本経済にとっても労働力不足はいいことです。省力化投資をするため、日本経済が全体として効率化していくわけです。全ての飲食店が自動食器洗い機を買えば、飲食業が効率的になります。もちろん、企業にとって労働力不足は辛い時代です。高い賃金が払えない企業は労働者がどんどん辞めてしまいます。経営者の方には効率的な経営を今まで以上に心がけていただく必要があり、積極的に賃上げをして、ライバルから労働力を引き抜いてくるといったことを心がけていただく必要があります。賃金が上がるということは、賃上げ分を売値に転化する企業が増えるでしょうから、消費者物価が上がる時代になりそうです。銀行預金はインフレが来ると預金が減ることはありませんが、預金で買えるものは減ってしまうため、「預金が目減りする」と言いますが、それは困るため資産を全部銀行に預金しておくのではなく、一部はインフレに強いもの、例えば株や外貨などを持っておくことも検討してみたらいいかもしれません。 次に「人口減少の時代」について考えてみましょう。日本の人口は確実に減っていきます。しかも大都市の人口はそれほど減少せずに地方の人口からどんどん減っていく傾向があるため、少数の高齢者だけが住む村が増えていく可能性が高いと思います。そうした村は、店の採算が取れずに閉店してしまったり、医師が不足したりと生活が不便になっていくことが懸念されます。一方で、都市に住んでいる人から見ると、そういう村にも電気やガスや水道を供給しなければいけないため、大きなコストがかかり、それを都市の人が負担する必要が出てきます。村の人が全員揃って町の近くに引っ越してくれれば村の人にとっても便利ですし、電気・ガス・水道を供給するコストも減るわけですが、生まれ育った場所を離れたくない高齢の方も多いため、なかなか簡単にはいかないでしょう。私としては、政府が多額の奨励金を払って移住して下さるようにお願いするというのも一手だと考えています。もちろん個別の事情もあるでしょうから難しいと思いますが、一つでも二つでも集落が移転してくれればそれだけでも事態は改善するのではないかと思います。 一方で都会の住民にとっては、人口減少により不動産が余って値下がりしていく可能性があります。自宅を売って老人ホームに入ろうと思ったら、自宅が安くしか売れないという可能性があるため、そこは考えておいた方がいいかもしれません。例えば子どもが独立した段階で郊外の少し広めの一戸建てから都心の小さなマンションに引っ越しておくといったことも検討してもいいかもしれません。 では、続いて「米中対立の時代」についてです。 アメリカと中国が最近どんどん対立を深めつつあります。そうした中で、中国との貿易が段々難しくなっていくかもしれないということは覚悟しておいた方がいいと思います。戦後アメリカとソ連の冷戦があり、その間、日本とソ連間の貿易はほとんど行われませんでした。中国との貿易は非常に盛んにおこなわれているため、一気にゼロになることは有り得ませんが、少しずつ減っていくということは十分に覚悟しておいた方がいいと思います。我々一般庶民に直接影響する話ではなさそうですが、企業としては中国への輸出が難しくなったり、中国に進出している子会社の経営が難しくなったり様々なことが起こる可能性があります。おそらく最も大変なのは、中国から部品や原材料が買えなくなると、国内の生産が出来なくなってしまうかもしれないという点ではないでしょうか。そういうことも考えた上で、リスクを避けるために中国だけと取引するのではなく、様々な国と取引しておいた方が安全だということを企業は考えておいた方がいいかもしれません。 では、今日のまとめです。 少子高齢化による労働力不足でインフレが来るかもしれません。人口減少で過疎地の問題が深刻化するかもしれません。米中対立が日中経済関係に影響するかもしれません。様々なことを考えながら今後の対策をしておく必要が出て来るでしょう。
本当に世の中が大きく変わるときに私たちが何をしなければいけないか。それは、変化に応じて私たち自身が変わり続けなければならないということです。自分達が変わるということは、学ぶということです。新しい情報を自分の頭の中に取り込んで、もしくは新しい今までしていなかった経験から新しいことを考えて、自分達の行動を変えていかなければなりません。 最近の例で言えば、本当に毎日気候変動の話やESGという言葉を聞かない日はありません。ビジネス業界も「環境」と言うようになりました。これは、20~30年前には全く無かったことです。環境の変化を理解し、企業行動を一社一社が変えていかなければいけないということを学び、私たちの行動が変わりつつある、変わってきた証だと思います。 こういうパターンで世の中に対応していく、もしくは出来れば今の状況を少しでも良くする方向に向かっていくことが、今後必要になってくると思います。ただ、冷静に考えてみるとこれは非常に大変です。一個人として考えてみても、例えばこれからは人工知能の時代です、生成AIが出て来たからChatGPT。デザインが重要。グローバル化だから英語は最低限必要でこれからは中国語も出来ないとねとか。あらゆることが次から次へと出て来たときに、とても一人では出来ません。 それぞれの人に、目の前の現実の問題があります。そうすると、そういうことがわーっとあれもこれもと言われると、やっぱり人間ってもう無理だなと思うと逆にやる気がなくなってしまうことがあると思います。でもその時に思い出していただきたいことは、あなたは決して一人ではないということです。例えば、英語は出来るけれど中国語は出来ないという人がいたら、中国語を使いたいときには中国語の通訳の人を連れてくればいいのです。最近は機械が同時通訳してくれるようなものも出来つつあります。テキストであれば、それこそChatGPTに英語を打ち込んで中国語に変換してもらうこともできるわけです。極論かもしれませんが、もはやビジネスのことだけを考えるのであれば、外国語を勉強するニーズは実は低くなってしまうかもしれません。AIの力を借りて、自分のやれることを広げていくこともできるわけです。 それゆえ、私は、やはりこれから先の大きな変化を乗り越えていくためのキーワードは、「人的ネットワーク」だと考えています。。時代が変化し、どんどんAIを活用する時代になってきたけれども、結局は人と人とのつながりに戻ります。例えば、アナウンサーという仕事は私には出来ませんが、そういうことをやりたければ「○○さんにお願いしよう」というネットワークがあれば、やれることの幅が広がります。中国語が出来ないのであれば、中国語のいい通訳を連れてくればまたそこでやれることの可能性は広がります。結局、世の中が変わり、どんなに複雑化しても、今ある課題を解決するために必要な人といかにつながって、お互いに信頼し合って良い物を作っていくことが出来るかということが大切なんです。例えば、会社単位でみると今までは全部自社でやろうとしていたことも、「あそこと組めば出来る」とここ10年くらいでスタタートアップと大企業のコラボや、オープンイノベーションなど、自分の得意な部分を磨いて他者とのネットワークを生かした取り組みが行われるようになりました。それは個人でも組織でも同じことだと思います。しかし、やはり人的ネットワークは一日で出来るものではありません。いかに周りにいる人からの信頼を獲得できるような行動をとってくか、積極的にそういうネットワークを作りにいくかが実は地味なようで将来のことを考えると大切なことになっていくはずです。 環境の変化に対応するためにはまず学びましょう。しかし、学ぶことにも限界があるため、日々の努力でいいネットワーク構築することも大切です。
今月の「QT-netモーニングビジネススクール」はスペシャルバージョンです。 「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」という共通のテーマでお話ししています。 将来についてすべてを語りうる専門家というのはおそらく世の中に一人もいないと思いますが、今日は、少し大風呂敷を広げて考えてみたいと思います。この5年・10年ほど「VUCA」と呼ばれるようになりました。一言で言えば、何が起きるかわからない時代です。例えば人工知能やロボットなどのテクノロジーの進歩により、世の中が激変すると喧伝されました。その一方で、AIが組み込まれたアプリケーションを我々はもう当たり前のようにスマホ上で使用し、それがない状態に耐えられないほど浸透しているという側面もあります。VUCAの次に我々が本当に予想しなかったことは、新型コロナウイルスの流行と、21世紀この時代になって1年以上大国が戦争しているというこの事実です。一方で、何が起きるかわからないこの時代の中で、今後起こることが、ほぼ確実にわかっていることは「気候変動」の問題です。30~50年前には地球温暖化が起きるかもしれないといわれていましたが、現在では、それは確実され、日本でも100年に1度の異常気象が毎年起きるようになってしまいました。例えば、今年は東京で日中外に出ると36度、37度と危険を感じる暑さです。理科の教科書に書いてあった百葉箱の中で測った温度が37℃ですから、東京の銀座で測ったらおそらく40℃を超えているはずです。そうすると、私たち人間の肉体としても環境に適合していかなければならなくなったわけです。これらをトータルで考えると、3年先、5年先、10年先というのは、この人類にとって何が起きるのかわかりにくい、もしくは私たちの想像を超えたことが何か起こってしまう時代になってしまったと言えると思います。 最後に戻ってくるのは何かというとダーウィンの話かもしれません。環境の変化に適応した人・生物だけが生き残ることができると考えると、気温のことだけを考えても、私たちの肉体はすでに徐々に変わっていっているのかもしれません。肉体だけではなく、変えられる部分は全て変えていかなければならないのかもしれません。例えば、AIが発展するのであれば、AIの発展に伴って私たちの能力も変えていかなければならないのかもしれません。世の中がどんどん複雑化し、今までのロジックでは戦争をおさめるロジックが作れないのであれば、私たちは、さらに人間に対する洞察を深めて、よい解決方法を見出せる人類の知を獲得しなければなりません。何か大きく物事が変わるということは、人間自身が大きく変わっていかなければいけないということだと思います。変わるとはどういうことかというと、「学ぶ」ということです。自分の考え方を変える、もしくは相手の考え方を変えてもらうためには、自分が学び、相手にも学んでもらい、そしてコミュニケーションのやり方を変え、そして出せる結論を変えていくことを積み重ねていくこと以外に、人類が本当に大きく変わっていく状況の中で、生き延びていく術はないのではないかと感じます。ある日突然「○○さん、考えを変えて下さい」と言われても、今まで20年、30年、40年、50年も培ってきた考え方のパターンや生活パターンは簡単には変えられるものではありません。だからこそ、日々の積み重ねが非常に大事になると思いますし、将来を見据えて子どもの頃から教育システムを変えていく、何を子どもに伝えていくのかを真面目に考え、抜本的に変えていかないと、よい世界にはならないのではないかという気がしています。昔ながらに記憶して、そして記憶したものをマークシートでテストして点数を出すという試験を入試でいつまでやっているのでしょうか。そのやり方でこれから本当に変わっていく世の中に対応出来る人達が育つのだろうか。2つのキーワード「変わる」、「学ぶ」、そしてそれを「続ける」ということが、唯一私たちがこれから先のもう不可避的な大きな変化に耐えうる社会を作れるかどうかの分かれ道になると思います。 では、今日のまとめです。 世の中が大きく変わっていくということを前提としたときに、私達が一体何が出来るのかという問いを頂きました。非常にありふれた答えかもしれませんが、それは我々自身が変わっていく世の中に追従していくために我々自身が変わる、変わるために学ぶ、そして学ぶだけではなくて学び続けるということがとても大切になっていく、そんな時代が訪れていると思います。
「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」という共通のテーマでお話ししています。 前回は、35年の社会人経験の中で世界の状況は本当にめまぐるしく変化してきたというお話でした。今日は、これからの起きる変化に対して一体何が必要なのかについてお話します。 1つ目に必要なことは、「時代/ビジネスについて学ぶ」ということです。 今目の前で起きていることはそもそもどういうことなのか、この問題の本質は何で、その背景にある根本原因はいったい何なのかをしっかりと考えるためのスキルが必要ではないかと思います。私達の多くはビジネスについて学ばずに社会人になっています。私自身の経験で考えてみても、やはりビジネスの仕掛けや経済との関係、あるいは国家間の影響について理解していた方がよりよい打ち手が打てるのではないかと思います。オンラインでも本を読むでもどんな方法でも良いので学び始めることが必要ではないかと思います。 2つ目に必要なことは、「より多くの仲間を作る」ということです。 自分の会社の中だけではなく、できるだけ会社以外の仲間を作ることが大切ではないかと思います。そして仲間を助け、仲間から学ぶことで、自分には見えなかった角度で物事を理解できるようになります。自分1人ではできないことでも、仲間がいれば、実現できることはたくさんあります。仲間と共に何かを成し遂げるような努力をすることも大事だと思います。コミュニティ活動や社会の勉強会への参加という選択肢ももちろんありますし、私自身が教えているグロービス経営大学院ではたくさんの仲間と知り合え、学べるようになっています。それもまた選択肢の1つなのかもしれません。 最後に何よりも一番大切だと私が思うのは、「自分はこれから何のために生きていくのか」、命を使うと書いて「使命」と呼びますが、そうしたことを考えることも非常に大切ではないかと思います。私自身、2度の企業破綻の経験から、三十代後半の時に「日本において良い経営を実現して、それを世に問いたい」ということを自分の使命として定めました。その使命のもと、約25年間走り続けてきました。そして今は教壇へ立たせていただいています。この番組を聴いて下さっている皆さんに私自身が考えるリーダーの姿をお伝えできる機会をいただくことができたことをうれしく思っています。 自分が何のために頑張るのかを定めることが結果的に色々な運をつかむきっかけになっているのではないかと感じます。ただし、私自身はみなさん全員が使命や志を持たなければならないというつもりはありません。しかし、もし皆さんがリーダーとして少しでも周りの人たちを良い方向に導いていきたいと思うのであれば、是非ご自分の「使命・志」を問い続けてもらいたいと思います。先ほども申し上げたように、自分自身に「自分の使命とは、志とは何だろう」と問い続けることで、きっとこれまでにはなかったような素晴らしい出会いが訪れてくれると思います。そうしている中で、徐々に自分が何のために生きていくのかもまた定まってくるのではないかと思っています。 今日は、「これからの時代に必要なもの」というテーマでお話しさせていただきました。「学ぶこと」、「仲間を作ること」、そして「使命感・志を持とうとすること」の3つが必要だとお話ししました。ただ、最後に何よりも申し上げたいのは、前回も申し上げたとおり、「未来に対する希望を持つこと」が何よりも大事です。時代が変化すればするほど悲観論が増えます。けれども我々はこれまでの時代の中でも、少しでも明るい未来になるように歩んできました。我々が今日よりも少しでも良い明日を自分達で作ろうではないかというそんな思いを1人1人が持つことが結果的にとても大切なのではないかと思います。本当にめまぐるしく環境が変化する中、これからどうなるのだろうという不安が常にあると思います。その中で悲観するのは簡単ですけれども、そうではなく、やはり希望を持って、「私達に何ができるのか」ということを問い続けながら、学び続けながら、みんなで力を合わせて、良い社会を作っていこうというマインドが大切になってくるのではないかと思います。 私は世界各国で学ばせてもらっていますけれども、やはり日本の素晴らしさとは、仲間や志を大切にしながら真面目に良い未来を目指そうという姿勢だと感じています。そういうところをこれからも大事にしていきましょう。
さて、今月の「QT-netモーニングビジネススクール」はスペシャルバージョンです。 「大きな転換期を迎えている今、私達はこれからの未来をどう生き抜くか」を共通のテーマにお話しています。 今日は、私自身が社会人として35年様々な仕事をさせてきていただく中で起きたこと、そこで感じたことをまず簡単にお話したいと思います。実は私が仕事を始めたのはバブルが始まった頃でした。その後バブルを経験し、バブルが一気に破裂し、更にはインターネットバブルというものが発生して景気が良くなってきたと思ったところでリーマンショックにより景気がドーンと落ち、ギリシャ危機で国が事実上"破綻"したり、その後プラットホーム企業(GAFA)が登場したり、この半年は「ChatGPT」に代表される生成AIが発展するなど、この35年の間に本当に様々な変化がありました。 世界に目を転じて考えると、私自身がその35年の中で最初に記憶に残っているのは「ソ連の崩壊」です。実はその当時、私はディーラーの仕事をしていて、まさかソ連が崩壊するとは思わなかったため、多額の損失を出して大騒ぎになったことがあります。 それから30年前には、まさか中国がアメリカを抜く勢いで成長しこれほどまでの大国になるとは、全く想像もつきませんでした。私が社会人になりたての頃は、ヨーロッパとアメリカで成功すれば日本企業は大丈夫ということを皆かたくなに信じていましたが、今は東南アジアと中国で成功しなければ勝てないという時代になりました。そのような中で、超大国米国あるいはソ連がアフガニスタンで負けてしまったり、今ウクライナで起きているように、多くの国々が反対していても強引に他国に攻め込む国があったり、新型コロナウイルスの流行や大震災も起きました。 この1、2年ではSDG、ESGといって、このままでは世界は維持できないのではないだろうかということを若い方々が真剣に議論する世の中になりました。 我々が歴史の科目(世界史・日本史)を読んでいても、これだけ短期でこれほどの変化が起きることは、おそらく過去なかっただろうという20~30年だったと思います。 かくいう私自身も5つの会社で働いてきた中で、2つの会社は破綻をしました。そして、1つの会社では破綻した会社の役員として立て直しを依頼され、アメリカ資本の会社を皆で立て直すという経験をしました。また別の会社では入社して2ヶ月目にメディアの前で不祥事の記者会見をして、担当役員として再発防止策の説明をせざるを得ないという経験をしました。 本当に様々なことを経験してきた中で1つ言えることは、本当に今世界は大きく動いていて、それによって私達1人1人の人生が想定できないような問題に直面する時代になってきたと感じますし、確かにたくさんの尊い犠牲というのはありましたが、結果的に皆で協力して乗り越えて、そして今日があるということです。 毎日朝日を見て、仕事をして、家で家族とご飯が食べられるというのは、結果的に皆こうした事態を乗り切ってきてきたということを忘れてはいけないと思います。「今かつてない大変な時代になっている」と皆は言うけれども、だけどこれまでもたくさんの時代を皆で乗り越えてきているということを忘れてはいけません。 もちろん立場によって違う見方も考え方もあるかもしれません。ただ、大きく言うと人類は様々な問題を乗り越えて、そして明日に向かって立ち上がる力があるということ。今AIが出てきて、これまで人間がしていた仕事がAIに取って変わられるのではないかと言われています。そして、かつてないほどにAIによって世の中は便利になってきていると感じます。そんな中で我々は、きっとこの変化を乗り越えていくとまずは信じること、そしてそのために必要な能力とは何か、あるいは未来を生き抜くためにどういう心構えでいるのかを1人1人がしっかりと考えていくことが大切ではないかと感じています 。「大丈夫だから、どうやって乗り越えていくか皆で考えよう」というマインドでいることが一番大切ではないかと思います。では、具体的にはどうしたらいいのかについては、また次の時間にお話します。 漠然とした不安があると思いますが、まずは自分達が気持ちを強く持ち、「これまでも乗り越えてきたのだから、これからも乗り越えていけるんだ」と思って頑張ることが大切なのです。
今日は、逆境に負けない心、「レジリエンス」という力についてお話します。 ITや人工知能などのテクノロジーの進化、グローバル化の進展など、社会環境が大きく変わり続けている中、私たちビジネスパーソンは常に大きなストレスにさらされています。しかし、同じストレス下で働いていても、心が折れる人と折れない人がいます。複雑化する社会環境の変化に適応化する力として近年注目されているのが「レジリエンス」という力です。今日は折れない心を作るためのキーとなる「レジリエンス」についてお話します。 「レジリエンス」とは、回復力・復元力などの自発的な治癒力を表す言葉です。元々は心理学の世界で、「困難や脅威に直面した時に上手く適応できる能力」を意味する言葉として使われてきました。現在では、ビジネスにおいても困難を乗り越える力として非常に注目をされています。 レジリエンスが高くて心が折れない人の特徴を3つご紹介します。 1. 柔軟で多面的な思考力を持ち、目の前の状況に一喜一憂しないという特徴 レジリエンスの高い人は、ある一面から見ると悪いと思えるようなことであっても、あらゆる側面から考えることによってポジティブに解釈し、最適なアクションを見出だします。そのため、目の前の出来事に一喜一憂することなく、感情が常に安定しているという傾向にあります。 2. 周囲との信頼関係を築くことが得意という特徴 レジリエンスが高い人は、柔軟且つ多面的な思考をすることから、周囲から様々な意見を集めることができます。一方的なコミュニケーションではないため、周囲との信頼を上手く構築していきます。その信頼をベースにして、周囲に任せたり頼ったりすることができます。 3. 失敗や困難なことがあっても、チャレンジし続けるという特徴 困難なことがあったり失敗したりすると次の挑戦が怖くなるということは珍しいことではありません。ただし、レジリエンスが高い人は困難や失敗があっても次はどうすれば良いか、他にできることはなかったかなど多面的に捉えて、そこから学び・成長しようとします。 以上のように、レジリエンスが高い人は、どういう逆境があっても多様な角度から捉えて一喜一憂せずにチャレンジし続ける特徴があります。 では、「レジリエンス」は一体どのように高めていったら良いのでしょうか。 レジリエンスの高低には、ある程度の遺伝要素があるとも言われていますが、誰もが多かれ少なかれ内面に持っている特徴でもあり、後天的に高めていくことも可能です。そこで、レジリエンスを高めるための方法を3つご紹介します。 1. 自己効力感を高める 自己効力感とは、困難な出来事に対して、「自分ならできる」と思える認知状態のことを言います。この自己効力感の高め方については、過去の放送で松岡先生が詳しく紹介しているため、是非過去の放送分をご確認ください。 2. 思考パターンを変える 多くの人が自分の思考を変えるのは難しいと思うかもしれませんが、正しいやり方を理解し、実践することで思考を変えることができます。そこで、臨床心理学の博士アルバート・エリスが提唱した「ABCDE理論」という論理療法をご紹介します。 A「Activating Event」:出来事や事実のこと。 B「Belief」 :信念や考え方(価値観・思い込み)のこと C「Consequence」 :結果や解釈により生じる感情や行動、身体反応のこと 人は、出来事「事実A」に対して、自らが持っている「信念B」によって解釈をします。その結果として、「感情や行動・身体反応C」が引き起こされます。 例えば、「職場で上司に怒られた」という「Activating Event(出来事)」がありました。その時の「Belief(考え方)」として、「上司の期待に応えることができず、仕事ができないと思われてしまったに違いない」と捉えてしまうと、「Consequence(結果)」からくる感情としては、「自分は何をやっても上手くいかない」となります。しかし、こうした時こそ「ABCDE理論」で考えてみてください。 上司の期待に応えることができず、「仕事ができないと思われてしまったに違いない」という「Belief」は果たして正しいのでしょうか。 D「Dispute」 :反論のこと 「反論D」を加えてみます。上司に怒られたという「Activating Event(出来事)」に対して、「上司は期待してくれているからこそ指摘をしてくれたのだ」というように新たな捉え方をしてみると、今回の指摘を反省点にして次回同じようなミスをしないようにしようという「Consequence(結果)」からくる感情を変化させることができます。 E「Effect」 :効果のこと 「反論D」により、自分自身の「Belief(考え方)」を修正したことで「Effect(効果)」が変えられることから、『ABCDE理論』と言われています。出来事に対する自分自身の捉え方や解釈を変えることで、出来事に対する意味を変えていくということです。「A」という出来事や事実は変えられなくても、「B」という自分の信念に「D」反論を加えてみて、好ましい捉え方・解釈をすることで思考パターンを変えることができます。『ABCDE理論』を日常の中で取り入れてみると、「レジリエンス」が高まり、物事を多面的に捉えてポジティブに解釈できるようになります。 3. 周囲との繋がりを持ちサポートを得る まずは自ら周りをサポートすることで周囲からの信頼を築いておくことが大事です。多くの人は、人から何かをしてもらったら何かお返しをしてあげたいと「返報性の原理」が働くものです。なにより一人でできることには限界があります。周囲と協力することによって複雑で困難な問題にもチャレンジすることができるようになります。 では、今日のまとめです。 今日は「レジリエンス」についてビジネスに求められる背景や、レジリエンスが高い人の特徴・高める方法をお話しました。時代の変化が激しい中、私たちビジネスパーソンには困難や逆境が今後もたくさん訪れるはずです。そんな時でも心折れることなくチャレンジを続けていきたいと思います。今、苦しいことを経験している方は、それはきっといつか誰かを助けることになるのではないかと思います。レジリエンスを高め、変化の激しい時代を生き抜いていきましょう。
今日はチームに発達段階がある「チームビルディング」という考え方についてお話します。 メンバー1人1人は有能なのにチームとして思うように成果を上げられていない。昨年までは上手くいっていたのに、今年になってからメンバーが上手くまとまらない。こういったチーム作りに関する悩みをもつリーダーやマネージャーは多いのではないかと思います。かくいう私も日々チーム作りに悩み、もがいている1人です。そこで今回は、チーム力を高めるためのチームビルディングの重要性や意識すべきポイントについてお話します。 様々な悩みがあると思いますが、まずは改めてこの「チームビルディング」が必要となる背景や理由からご説明します。 ITの進化やグローバル化の進展などにより、私たちを取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。考慮すべき事柄・選択肢が複雑に絡み合う中、リーダーの能力や個人の能力だけでは成し遂げることが出来ない難しい目標も沢山あります。これらを達成するには、チームとしての組織力を高め、一丸となって成果をあげる必要があります。そこで重要となるのが、「チームビルディング」という考え方です。アメリカのタックマンという心理学者が、チームビルディングには4つの成長段階があると提唱しています。これを「タックマンモデル」と言いますが、チームにはしかるべき発達段階があり、それぞれの発達段階を経てようやくチーム一丸となれるということです。チームビルディングを進める上で、まずは自分のチームが今どの段階にあるのかを見極めることが大切です。 具体的には、以下の4つの発達段階に分けられます。 1. 形成期/フォーミングと呼ばれる段階 これはチームが結成されたばかりの最初の状態です。メンバーはまだお互いのことをあまり知らず、不安や緊張、遠慮が見られます。お互いに本音を出さずに様子見をしている段階です。この段階では、表面的なコミュニケーションをとる傾向にあり、活発で有意義な議論というのは難しい状態にあります。この段階では、リーダーが主導となって共通の目的を定めることが重要です。共通の目的が定まると、メンバーそれぞれが目的に向かうための課題について解釈をし始めます。 2. 混乱期/ストーミングと呼ばれる段階 この段階では、メンバーそれぞれが自身の目標に向かって進み始めています。そうすると、それぞれの仕事に対する考え方や業務の進め方が異なることが気になり始めて、メンバー間の中で意見の衝突が起きます。次の段階に進むためには、意見の対立を恐れずに、議論を通じてお互いの相互理解を深める必要があります。 3. 統一期/ノーミングと呼ばれる段階 メンバー同士が意見を出し合うことでお互いの価値観や考え方への相互理解が深まり、チームの目標やその達成に向けた1人1人の役割が明確になっていきます。この段階になるとチームとしてのまとまりが出来てきて、リーダーによる規律やルールが定着をする段階です。そしてこの時期は、それまで発言していなかった人から積極的に発言が出るようになり、笑いや議論が自然に起こったり、チームが活性化したりしていきます。 4. 機能期/パフォーミングと呼ばれる段階 チームとしての成功体験ができ、リーダーの指示がなくてもメンバー同士で自立的に動いて、相乗効果によって更に大きな成果が生まれる状態になります。 以上のように、チームは「フォーミング」・「ストーミング」・「ノーミング」・「パフォーミング」という4つの段階を経るといわれています。 チームの発達段階を考える上で、必ずこの段階を経る必要があるのかという疑問がわいてくる方もいらっしゃるかと思います。例えば、チームメンバー同士の衝突である「混乱期/ストーミング」は避けられるのであれば避けて通りたいと思うのではないでしょうか。しかし、チームビルディングを進めていく上特に重要になるタイミングがこの「混乱期/ストーミング」の時期です。これは次のステップを進めるために必要なプロセスであり、この段階をいかに乗り越えることが出来るかが成果の出るチームになるかどうかの最重要ポイントになります。 やはりチームの発達を考える上では必ず必要な時期であり、むしろそれがないといけないということです。もう1つこのチームビルディングを行う上で忘れてはならないことは、新しいメンバーを迎えたチームは、「形成期」いわゆる「フォーミング」の段階に戻るということです。「昨年まで上手くいっていたのに今年になってメンバーが上手くまとまらない」といった悩みが出てくるのは、「混乱期/ストーミング」を乗り越えて機能し始めたチームであっても、新しいメンバーが1人加わることで最初の「形成期/フォーミング」に戻るためです。せっかく良い感じになってきたチームが、1人でも新しいメンバーが加わったら元に戻ってしまうわけです。もしかしたら、自分のチームに新しく加わる人は経験豊富なベテランだから大丈夫と思う事もあるかもしれませんが、今いるメンバーの仕事の進め方と新たに加わる人の仕事の進め方には少なからずギャップがあるはずです。メンバーはそのことがまた気になり始めます。そうすると、新しいメンバーを加えたチームというのは、再び「形成期/フォーミング」の状態に入り、そこから「混乱期/ストーミング」を乗り越える必要があるわけです。 では、どのようにその「混乱期/ストーミング」を乗り越えていったらいいのでしょうか。 「混乱期/ストーミング」を乗り越えるための取り組みは様々ありますが、今日はその中から1つご紹介します。それは、お互いの衝突が起こり始めた時に「フィードバックの習慣化を促進する」という方法です。「フィードバック」とは、評価を本人に戻してあげる事を意味します。フィードバックをする上で重要なポイントは、「あなたは○○」と伝えるのではなく、「私は○○だと思った(感じた)」等、私「I」を主語にする事です。「あなた」を主語にすると、「あなたは○○すべきだった」といった批判的なニュアンスで相手が感じてしまうためです。一方で、「私はこういう状況なので協力をしてほしい」という「I」メッセージで言われれば、そういう状況であれば何とかしてあげたいなと、相手のことを考える余裕が生まれ、相互理解が促進されていきます。ポイントは、あくまでも「私は」ということで、自分の気持ちをお互いに言い合うということです。「私は」とお互いに言い合うことによって、お互いの価値観が理解でき距離感もつかめてきます。相互理解をすることでチームの目標、その達成に向けた1人1人の役割が明確になり、「統一期/ノーミング」の段階に移ることが出来ます。 では、今日のまとめです。 今日は「チームビルディング」についてお話しました。チームには「タックマンモデル」という4つの発達段階があり、中でも特に「混乱期/ストーミング期」を乗り越えることが重要になります。ぜひ1度、自身のチームの状態を見直してみることをお勧めします。ただ、チームビルディングは、一朝一夕で出来るものではありません。複数の人の感情が複雑に絡み合うことで本当に大変な営みです。しかし、大変だからこそ、チームを作り上げた時の達成感と経験は、キャリアの積み重ねの中でも貴重な経験、財産になると思います。
今日はアジアとヨーロッパの文化差と、それによってもたらされる消費行動に違いについて話します。古典的でかつ今も頻繁に研究で参照されているものとしては、マーカスと北山という2人の共同研究があります。この2人の1991年の論文で東洋と西洋の心理的、あるいは文化的な違いについて研究がされています。東洋と西洋、どういった点が最も際立って異なっていると思いますか。 東洋と西洋で異なっているのは自分自身の捉え方です。西洋文化では、専門用語で相互独立的自己観と言う、自分とそれ以外の組織や社会とはそれぞれあくまで別々のものだという考え方が中心とされています。周囲との関係でもまず自分自身の考え方や、あるいは自分なりの意見を表すという事が重視されています。それに対して東洋文化では、相互協調的自己観と言い、自分と自分に関わる組織や社会はお互いに切り離せない、結びつきの強いものだという考え方が中心です。つまり自分の考えも大事ですが、それに加えて周囲との協調性や調和を重視する考え方が非常に強いということです。実を言うと、こういった自分と社会との関わり方の考え方の違い、捉え方の違いが大きな消費行動の違いを生んでいると考えられています。 ハンとシャビットという2人の研究者の韓国人とアメリカ人の広告への反応の違いを調べた共同研究があるので紹介をします。この研究では色々な商品やサービスの広告をアメリカ人と韓国人に提示して、自己観の違いがどのような広告への反応の違いを生むかという事について調べました。その結果、アメリカ人は自分自身を表現する事を強調するような広告、例えば自分らしくだとか、化粧品だと自分らしい肌にという、そういったキャッチフレーズに非常にポジティブに反応する傾向がありました。反対に韓国人は、自分に加えて自分が所属するものの利益になるという事を強調する広告に非常にポジティブに反応する傾向が見られました。例えば、家族と喜びを分かち合おう、ビジネスパートナーとの本当の友好関係を築いていきましょうといったメッセージです。 もう1つ、意外な東洋と西洋の違いについても紹介します。ジャックとブレーズという人達の5人の研究者による調査で、日本人、中国人といった東アジアの人とドイツ、イギリスといった西ヨーロッパの人とでは、相手の表情を読み取るための手がかりが大きく異なっていました。それは目と口です。まず、ドイツとイギリス人は、顔の表情を読み取るのに主に口の動きに注目していました。口が笑っていると、この人は笑っていると判断しました。それに対して中国人と日本人は、目に注目して相手の表情を判断していました。北海道大学の結城先生は、日本人とアメリカ人を対象にして同様の研究をしています。その中では、日本人は目が笑っていれば口が笑ってなくても笑顔だと判断しました。それに対してアメリカ人は、口が笑っていれば目が笑ってなくても笑顔だという判断する傾向があったようです。 例えばアメリカのキャラクター、マーベルシリーズみたいなそういったキャラクターは、顔はマスクしていても口は隠れずに見えるようにしている場合が多いです。ですが、日本だと忍者や、あるいはアニメのキャラクターでも口元をマスクして隠しているキャラクターも多いです。これは東洋と西洋の顔の表情を読む時に、どのパーツを使うのかという違いからきたものだという事も言えます。 アジアでは化粧品は目元を際立たせてくれるというものがすごく人気ですが、ヨーロッパと北米では、それほどでもないです。これはこの東洋と西洋の表情の読み取り方の違い、これをマーケティングに活かす一つの例だと言えます。どうしてアジアでは、目元で表情を判断しようとするようになったのでしょうか。 あくまで沢山ある研究の中で主張されている説ではありますが、自己主張するという事がポジティブに評価される文化と、自己主張より周囲との調和を図るという事が推奨されている文化との違いが関係していると言われています。目は口に比べて嘘がつきにくいパーツだそうです。目の周囲の筋肉は意図的なコントロールが難しいとされています。心からの笑顔と作り笑顔はこの筋肉の動きに大きな違いが表れるそうです。反対に口は口角を上げれば、多少無理やりにでも笑顔に出来ます。周囲との調和を図るような文化圏ですと、本心をあまりオープンにしないという事もあります。そのため、コントロールの難しい目に注目するという事で、相手の本心を探ろうというそういった性質が備わったと考えられています。 今日のまとめです。今回はアジアとヨーロッパの文化差とそれによってもたらされる消費行動の違いについて、自己観の違いを切口に話しました。こういった文化差の違いを考えながら広告やその他のマーケティングを考えていく必要性があります。
今日は消費者の心理と消費行動との関係について話をします。特にパーソナリティー、日本語では性格などと訳されるものですが、それと消費行動との関連・特徴について話をします。マーケティングではターゲットになる消費者を絞り込むために、いくつもの軸を使って消費者を別々のグループに分類します。その上でそれらのグループに対して効果のある広告、あるいは販売方法を考えていきます。身近なものだと、地域を軸にして消費者を分類するという方法があります。例えば、ある有名なインスタントうどんでは東日本と西日本で、だしの味を変えています。これは地域を軸にして消費者を分類しているということです。 パーソナリティーでどのように軸を作って消費者を切り分けるかということを話します。日本語では性格や人格と訳されますが、実際はそういった日本語から想像するよりもより広いものとして、パーソナリティーはとらえられています。分かりやすく言えば、内部や外部からの環境、何らかの刺激に対してどういう風に反応するのかを決めるといった心理的な特徴の事です。例えば人気のあるラーメン屋さんで、長時間列に並んで待つことが平気だという人もいれば、そうでない人もいます。また、他人と話す事に緊張するという人もいれば、そうでない人もいます。こういったものが、パーソナリティーの違いです。 このパーソナリティーをどのように分類していくのかという事については、いくつもの方法が研究されてきています。今回はその中でも古典的なものを1つ紹介します。ちょっとした心理テストを試してもらいます。今から2つの質問に答えてもらいます。3つの文章を提示するので、全ての内容に合意出来なくても、他の文章よりも自分に当てはまるなというものを直感的に、あまり考えずに選択をして下さい。こうなりたいというものではなくて、これまでの人生の大半において、実際にそうだったなと思えるものを選んで下さい。では、1問目です。3つ文章を出します。まずA:欲しいものは遠慮しすぎずに確実に手に入れる。B:自分と周囲とのバランスを大切にする。C:つい自分の中の世界に浸りがちになる。では、2問目です。D:楽観的過ぎて問題になる事がある。E:冷静沈着で合理的な人だと思われる。F:気持ちを発散したら気が収まる。これらのうち、どれが1番それぞれ自分に当てはまりますか。これは、カレン・ホーナイという新フロイト派の学者が考案した質問です。正式なものは60以上の質問から出来ていますが、今回はその中の短縮版です。 例えば、AとDを選んだ人は自己主張型と言われるタイプに分類されるパーソナリティーを持っているという事が分かります。この自己主張型はタイプ7の熱中する人と言われており、活動的でかつ外交的なパーソナリティーを持っていると言われています。これは自己主張型の全般的な傾向としては、困難に何か直面した時にそれに立ち向かうタイプ。また、自己主張や、ある程度自己をアピールしたいという意識が強く、自分の能力に自信やプライドを持って、出来れば他の人からもリスペクトを得たいというタイプです。 自己主張型と追従型、遊離型という大きく分ければこの3つのタイプがあります。このパーソナリティーと消費行動にはある一定の関係性があるという事が明らかにされています。コーエンというアメリカの学者が調査した結果分かった事ですが、例えば、追従型は協調性を重んじるタイプです。そのために他の2つのタイプに比べて人に好かれたいというような欲求が強いそうです。そのために沢山の人に受け入れられているようなブランド品を好む傾向にあり、その分、口コミに非常に強い影響を受けやすいという特徴があるようです。調査によれば、社交関係に気を配る傾向が強いので、石けんとかマウスウォッシュの消費量が他のタイプに比べれば多かったらしいです。自己主張型はどちらかというと、やや男性的というか野性的な製品やブランドを好む傾向が強いそうです。口コミや他人の意見の影響は他のタイプに比べれば少ない傾向があるようです。最後に遊離型は、他人と違った事をしたいという欲求が強いタイプです。特にあえて少数派であるという事を好む傾向にあるそうです。例えば、口コミが多い物をあえて避けるという傾向があると言われています。こういったパーソナリティーの違いによって、効果的な広告も変わってくるという事が分かるかと思います。例えば、追従型にアピールしそうなメッセージ、みんなから指示されているブランドですといった広告は、遊離型にはあまり効果的ではないと考えられます。 今日のまとめです。本日は消費者のパーソナリティーをどのように区分するか、また特徴などについて話しました。性別や居住地域といった分類軸に比べれば使い方は難しいですが、顧客がどのタイプのパーソナリティーを持っているのかを探ってそれに適したメッセージを流すという事がマーケティングを考える上で重要だと言えます。
前回は認知症の薬について話しました。日本の製薬企業エーザイがアメリカのバイオ企業と共同で開発したレカネマブ、早期の認知症患者の進行を緩やかにする薬効を示す画期的な新薬として期待も高いです。世界で急速に増加している認知症を薬でなんとかするという薬物療法は一つの手段ですが、それ以外の方法で認知症にアプローチする動きが見られます。今日はその医薬品以外の認知症克服に向けた産業の話をします。 認知症はある日突然発症するわけではなく、その前段階である軽度認知障害という症状が出て来ます。軽度認知障害は、正常と認知症の中間とも言える状態で、物忘れの自覚はあるが記憶力の低下以外に明らかな認知機能の障害が見られず、日常生活への影響は無いか、あっても軽度なものを軽度認知障害と言っています。軽度認知障害の人は、年間で10~15%の確率で認知症に移行すると言われています。逆にこの軽度認知障害のステージであれば、少し幅はありますが16~41%の確率で認知機能は正常な状態に回復すると言われています。ですので、軽度認知障害の人の特徴を素早く察知して早期発見、介入することで認知症の発症を抑制することが可能になります。これに向けた事例を2つ紹介します。 一つは東京電力の関連会社である東京電力パワーグリッドという会社は、国立循環器病研究センターとの共同研究で、家の中の電力使用データを用いて各家電の使用状況から認知機能の低下を予測するモデルを作成しました。研究では65歳以上の高齢者の電力使用データなどから、認知機能が低下している方と普通の方を比較して認知機能が低下している方は電子レンジの春と冬の使用時間が短く、エアコンの冬の使用時間が短い等の傾向が見られました。それに基づく予測モデルで予測性能がなんと82%という正確性を示しています。なぜ電子レンジの春と冬の使用時間が短かったり、エアコンの冬の使用時間が短かったりするのか、まだ原因はわかっていませんが、考えられることとしては付けたか付けていないかを忘れるなどして、スイッチオン・オフが短くなっているというのも考えられます。このシステムの良いところは、家庭にある分電盤にその機器を設置するだけでこのデータが得られるので、全ての家電に何かセンサーを付ける必要がなく、コストが抑えられることが特徴です。 2つ目の事例は、コニカミノルタと感情認識AIの開発を手掛けるスタートアップ、エモテック・ラボの技術についてです。認知症の患者さんは話し方、会話内容、感情推移が特徴として表れており、これらを分析することで次世代の認知機能の低下検知ソリューションを開発しています。例えば、認知症の患者さんは物忘れをしたときに不安を感じて立ち止まったり、突然行ったり来たりするといった特有の行動が顕著に出るとのことです。この他にもNTT Comが開発している電話の話し方や声の質からAIが認知機能を測定する技術であったり、SONYは認知症により嗅覚の機能が低下することに目を付けて、嗅覚を簡単に測定する機器を開発したりしています。視力や聴力と違ってなかなか自覚症状が出づらい感覚機能と言えます。そうやって色んな技術で認知症を早く発見していこうという試みや取組がなされています。 早期発見することによって正常な元の認知機能に戻るというデータもあるので、早期発見が非常に重要なポイントになってきます。認知症の予防や症状改善に有効とされているのは運動、余暇活動、友達に会ったり、映画を見たり、ボランティア活動をしたり、食事などが挙げられます。必要と思いながらも年をとるとなかなか自分から積極的に予防に向けた取組をするのは腰が重たいので、このような場作りを提供するサービスは自治体や高齢者を持つご家族にとって非常にニーズが高いと言えます。公文式で有名なKUMONは、高齢化施設に対して学習療法というサービスを提供しています。これは音読、計算を中心とする教材を用いて学習することで、高齢者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図ります。認知症は国全体が抱える大きな社会課題でもあり、今後認知症を取り巻く産業は成長産業であると言えます。特に予防は治療に比べると課せられる許認可のハードルが少ないので参入障壁は低いと言え、大きな市場になる可能性が十分にあります。 今日のまとめです。日本の65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超える超高齢化社会で、認知症の患者も国内だけで600万人を超し、65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されています。認知症は初期であれば既存の治療方法で進行を遅らせることが出来るので早期発見が重要で、それを可能にする技術やサービスが開発されています。高齢化が進む日本や他の先進国においては、認知症予防に対するニーズは高く、今後成長する産業の一つになります。
今回と次回で認知症とそれを取り巻く産業について話します。今回このテーマをとりあげた理由の一つになりますが、今年の7月にアルツハイマー病の治療薬として、日本の製薬企業エーザイとアメリカのバイオテクノロジー企業であるバイオジェンが共同開発したレカネマブという薬がアメリカで正式承認されました。この薬、世界的にもかなり注目されている薬です。なぜ注目されているかというと、これまでアルツハイマー病の治療薬は、症状を和らげる対症療法的な薬でした。今回承認されたこのレカネマブという薬は臨床試験で早期の認知症患者さんに対して、認知症の進行を緩やかにし、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせる効果が認められたと報告されています。このレカネマブという薬は、アルツハイマー病の脳内にその病気の原因と言われているアミロイドβという物質がありますが、そのアミロイドβという物質をこの薬によって減らしていくというような作用があります。 医療や医薬品にはアンメットメディカルニーズという言葉があります。これはいまだに満たされていない医療ニーズ、つまり現在有効な治療法や薬が無い疾患に対する医療ニーズのことです。近年画期的な新薬が色々創出されていますが、今なおアンメットメディカルニーズな疾患は存在しています。例えば、高血圧や胃潰瘍はこれまでに優れた医薬品が上市されているので、治療満足度は高い疾患になっていてアンメットメディカルニーズは高くないと言えます。一方、認知症は有効な治療方法や医薬品がないため治療満足度が低く、アンメットメディカルニーズが非常に高い疾患に分類されます。ですので、このレカネマブに対する期待度は非常に大きくなっています。日本では1970年に高齢化社会となって、2010年に超高齢化社会となりました。高齢化社会は65歳以上の高齢者の人口の割合が7%、超高齢化社会は21%を超えた社会のことを言います。世界でも日本の他に超高齢化社会となっている国はイタリアやドイツ、フランスなどが挙げられ、認知症患者の数も5,000万人を超すと言われており、今後ますます増えていくことが予想されます。このような状況ですので、世界の製薬企業は、認知症、特にアルツハイマー病の薬の開発に力を入れており、現在世界中で進められている臨床試験は200を超えると言われています。例えば、アメリカの製薬会社イーライリリーという会社は臨床試験中ですが、このレカネマブを上回る効果を報告しており、まさに世界の製薬企業がしのぎを削っている状況です。 世界中でアルツハイマー病の薬の開発が進む一方で、薬の効果があまり期待出来ないとして、フランス政府は大きな決断を下しました。2018年にフランスの厚生省が当時フランスでアルツハイマー病の治療のために使われていた4つの治療薬に対して、医療保険のカバーから外す決定をしました。それらの薬を使うためには全額自己負担ということにしました。なぜこんなことをしたかというと、フランス政府はこれらの薬が本当に患者さんのQOL(Quality of Life)、すなわち生活の質を高めているか、自立生活が出来る期間の延長など生活面で良い影響があるかなどを再度検証した結果、アルツハイマー病に使用されている薬物について現時点では改善の証拠は不十分であると判断したのです。一方で、使われていた薬は消化器系や循環器系などへの有害事象、すなわち副作用は無視出来ないとして、これらの薬を医療保険でカバーするのは適切でないと判断しています。その上でフランスでは、薬に投入されていた公的資金をかかりつけ医の役割の強化や、介護者の負担軽減、アルツハイマー病を持つ方が急にこの病気になった場合に対応する特別チームを設置するなど、薬物療法以外に向けるようにすることを決めました。限られた財源なので、それを投入してもその効果が十分に得られないと判断して、それ以外の認知症のケアの方に公的資金を投入することをフランス政府は決定したと言われています。この決定はフランスで行われたものであり、日本は継続して保険適用できますのでご心配なく。ただ、アルツハイマー病や認知症に対する公的資金の使い方に対して一石を投じた政策でした。 今日のまとめです。認知症のおよそ7割を占めるアルツハイマー病はアンメットメディカルニーズの高い疾患で、この疾患の医薬品開発をめぐり世界の製薬企業がしのぎを削っています。今年の7月にアメリカで承認されたレカネマブは画期的な新薬と期待も高いです。一方でフランスでは、過去に認知症薬による治療が患者さんのQOLが期待されるほど高くならなかったことなどを理由に公的な医療保険の対象外とし、ケアの方へ舵を切りました。超高齢化社会は世界の先進国でも問題になっており、各国の対応が注目されます。
今日は、チームのパフォーマンスを最大化する「心理的安全性」についてお話します。日本は今、少子高齢化の進行により労働力人口の減少が進み、労働市場における人材不足が深刻化しています。そのため、少ない労働力で最大の成果を生み出す、すなわち「生産性の改善(向上)」がこれまで以上に求められています。そこで、社員の生産性を高め、組織として最大のパフォーマンスを発揮するための概念として近年注目されているのが「心理的安全性」です。 「心理的安全性」とは、チームの中でメンバーが誰に対しても恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指します。このように聞くと、よく空気を読んで仲良くすることや、ぬるま湯のチームと捉えられることもありますが、実は全く異なる状態を指します。「心理的安全性」の高い職場では、寧ろ空気を読まない発言があったり、これまでのやり方や言動を否定するような発言もあったりします。一見すると、そうした状況では安心できないのではないかと疑問に感じられると思いますが、そここそが今日の大事なポイントです。 「心理的安全性」が高い組織というのは、仮に空気を読まない発言やこれまでのやり方を否定するような発言があったとしても、それを組織の中で否定されることがなく、人間関係や評価に影響しない、まさに心理的に安全な状態が担保されている状態のことを指します。 例えば、「反対意見を言ったら職場の人間関係が悪くなるので止めておこうかな」、「失敗が許されない雰囲気があるから無難に過ごそう」など、職場の中でメンバー同士が意見を出しづらい雰囲気があると、挑戦せず無難に過ごすことが多くなるため注意が必要です。このような状態では、メンバーそれぞれが空気を読むことに時間を費やしてしまい、自らの強みを発揮できずにいる可能性が非常に高いです。そうなると、チームの生産性が高まらないのは言うまでもありません。したがって、心理的安全性が高い状態というのは、お互いが思っていることを何でも言い合える関係ということです。 この「心理的安全性」と「チームの生産性」の関係を裏付けるものとして、アメリカのGoogle社が2012年から約4年の歳月をかけて行った、「成功し続けるチームの条件とは何か」を模索するプロジェクトアリストテレスという大規模な調査があります。このGoogle社のリサーチ結果では、「チームの生産性を高めるのに重要な要素として心理的安全性がある」と結論付けました。チームの生産性の改善(向上)は、世界中の企業にとって生き残りを懸けた非常に重要なテーマであることもあり、世界中から一気に注目を集めました。 では、具体的に労働生産性の向上に対して心理的安全性がどのようなメリットがあるかというと、大きく3つのメリットがあると言われています。 1. メンバーのパフォーマンスが向上し、業績や成果に繋がる メンバーがチームに対して不安や恐怖を感じることがない心理的安全性が高い状態にあると、社内の人間関係にとらわれることもなく、目の前の仕事に全力で取り組むことができます。 2. コミュニケーションが活発になり、イノベーションが促進される 心理的安全性が高い環境であれば、新人であれベテランであれ、不安を感じて発言を控えることがなくなるため、コミュニケーションが活発になり、結果としてこれまで誰も考えなかった創造的なアイデアが生まれやすくなり、イノベーションが促進されます。 3. 会社への満足度、愛着心が高まる 心理的安全性が高い組織では、社員がモチベーション高く働くことができ、一人一人が自身の能力を活かしているという感覚を持つことができます。結果として、会社への満足度が高まり、組織に対する愛着心が深まっていきます。そうすると、離職率も低くなり、優秀な人材の流出を防ぐことにも繋がります。 では、どうしたらこの「心理的安全性」の高い環境をつくることができるのでしょうか。 チームの心理的安全性を高めるためには、リーダーの役割が非常に重要であるということが明らかになっています。そして、心理的安全性を高めるリーダーには7つの特徴があるということが示されています。 1. 直接話のできる親しみやすい人である 何でも相談できる雰囲気を作ることが大切です。 2. 現在持っている知識の限界を認めることができる リーダーだからといって何でも知っておかなければいけないと気負うのではなく、自身の知識の限界を認めるということが重要です。 3. 自分もよく間違えるということを積極的に示す リーダーが果敢にチャレンジをして間違う姿はメンバーを大きく勇気づけることになります。人間は完璧ではないため、リーダーも完璧ではないということをまず自覚することが大切です。 4. メンバーに参加を促すということ 何でも一人で背負おうとせずにメンバーに積極的に参加をさせましょう。 5. 失敗は学習する機会であるということを強調すること リーダーが果敢にチャレンジをし、失敗から学ぶ姿勢を示すことで、メンバーも失敗を恐れずにチャレンジをするようになっていきます。 6. 具体的な言葉を使う リーダーはメンバーに対して「言わなくても分かってくれるだろう」という勝手な期待は捨てて、メンバーに指示を出す際には具体的な言葉を使うようにすることが大事です。 7. 境界を設けメンバーに責任を負わせる リーダーがメンバーに業務をアサインする時は、曖昧な状態ではなくどの領域までやってほしいのかを明確に伝え、その領域についてはメンバーに責任を負ってもらえるようにモチベートする必要があります。本当に積極的にメンバーにも参加を促してモチベートして、失敗を許容するという度量が求められるということです。 心理的安全性が高いリーダーは決してぬるま湯のチームではありません。それぞれのメンバーにチャレンジを積極的に促していくことが必要です。 では、今日のまとめです。 今日は「心理的安全性」についてお話しました。「心理的安全性」の高いチームというのは、メンバー同士がお互いに意見や指摘をし合って常にチャレンジし合う状態のことを指します。そして、心理的安全性を高める上で重要な役割を担うのがリーダーの存在です。リーダーの姿勢、発言や行動がメンバーに伝播し、全体のカルチャーとなって心理的安全性の高いチームに繋がっていきます。「リーダーは完璧ではない」、このことをリーダー自身が認め、メンバーと共に価値を作っていくという点においては、前回お話をした「フォロワーシップ」と通ずる部分があるのではないでしょうか。
私はグロービス経営大学院 福岡校の責任者・リーダーの高原と申します。これまでの経歴としては、前職は楽天に勤めていました。大小様々な企業の経営者の方にインターネットを使って売上を伸ばしていただくコンサルティングの仕事をメインで行っていました。8年間楽天で仕事をする中で、企業が成長するには、経営者を支援するだけでではなく働く人の成長も必要だと思うようになり、ビジネスパーソンの成長を支援するグロービスに転職しました。グロービス経営大学院では、自分の可能性を信じて学びに来る意欲の高いビジネスパーソンの皆さまの学びをサポートする仕事をしています。教えている科目としては、「クリティカル・シンキング」という論理的思考を磨くことをテーマにした科目を担当しています。ただ今回は論理思考の話ではなく、私自身がリーダーとして日々悩み考えていること、人やチームに関することについてお話出していきます。 早速ですが第1回目の今日は、「これからの時代にこそ必要なフォロワーシップ」についてお話します。 「リーダーシップ」という言葉はよく耳にする言葉だと思います。もちろん、組織運営やチーム作りをしていく上で、リーダーシップは欠かすことの出来ない重要なスキルですが、リーダーシップだけあれば組織の成果が最大化するとは限りません。併せて必要となるのが、「フォロワーシップ」という力です。 ところでみなさんは、「フォロワーシップ」と聞いてどのようなことを思い浮かべますか。 「フォロー」と言う言葉がついていますから、リーダーをサポートする(支援する)ことを指します。具体的にはどのようなサポートなのかというと、それは「チームの成果を最大化させるために自立的かつ主体的にリーダーに働きかけて支援すること」です。さらに具体的には、「リーダーの指示に従って行動するだけではなくて、リーダーの意思決定や行動に誤りがあれば、臆することなく提言を行う」ことです。 こう聞くと、リーダーが意思決定した内容に対して、臆することなく何かを言うというのは、かなり勇気がいることのように感じる方もいらっしゃると思います。そこで重要になるのが、リーダーの意思決定を単に批判するということではなく、「チームをよりよい方向に進ませるため」という目的を意識して建設的な提言を行うこと、リーダーを支援する気持ちを持つということです。 では、どうしてこれからの時代にこそ「フォロワーシップ」が必要なのでしょうか。 今、ITやAIなどのテクノロジーの進化や、グローバル化の進展など環境が大きく変化をしています。環境変化のスピードが非常に速いため、リーダー1人の意思決定が必ずしも社会やお客さまのニーズに適しているとは限りません。また、人材不足の問題や組織のフラット化によって課長職以上のリーダーのプレイングマネージャー化が進んでいる現状があります。リーダーは、自分の業務を遂行しながらチームをリードしていかなければならず、非常に業務の負荷が高くなっています。そのため、リーダーは自分の業務で手いっぱいになってしまい、適切なリーダーシップを発揮する事が難しい場面もあります。こうした背景から、リーダーを主体的に支援し、チームを健全な方向に導く提言・行動をする「フォロワーシップ」がこの変化の激しい今こそ求められています。 ここで1つ、興味深いデータをご紹介します。アメリカのカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によると、組織が出す結果に対してリーダーが及ぼす影響力は10~20%程度であるのに対して、メンバーが及ぼす影響は、80~90%にも及ぶという結果が出ています。つまり、この結果から組織が出す結果に対しての影響は、リーダーよりもメンバーの方が大きいと言えます。組織に占める人数の割合がリーダーよりもメンバーの方が圧倒的に多く、現場に最も近いところで実務を行っているのがメンバーであることを考えると、この調査結果も大いに納得出来るのではないかと思います。つまり、変化の激しい時代においては、チームとして成果を最大化させるためには、リーダーシップだけではなく、メンバーの「フォロワーシップ」が欠かせないということです。 これからの時代において「フォロワーシップ」は非常に大切ですが、フォロワーシップ単独で組織の影響力を発揮するということは出来ません。「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」が相互に関係しあいながら組織の影響力を発揮することが非常に重要になります。そこで、「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」がどんな関係性になるのか具体的に考えてみたいと思います。 リーダーの役割の1つとして、「組織の方向性やビジョンを示す」という役割があります。それに対するフォロワーの役割は「具体的な行動計画を立てて実行すること」です。他にも、リーダーの「意思決定をする」という役割に対して、フォロワーの役割は「提言を行う、健全な批判をする」という役割があります。つまり、「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」の関係性を車で例えると、車を動かすための「両輪の関係」にあるといえます。どちらかだけでは効果は低く、相互に影響をしあうことで組織として成果をあげることが出来ます。 とはいえ、「リーダーに建設的に提言をする」というのは非常に難しい課題です。では、「フォロワーシップ」を実践していくにあたり、どのような意識を持つと良いのでしょうか。 フォロワーシップを発揮する上で意識すべきポイントは大きく3つあります。 1. 自分に出来る仕事・業務を積極的に引き受けること リーダーの多くは、自分自身の業務を行いながらチームをリードしている状態にあります。メンバーはついついリーダーに全てを求めてしまいがちですが、リーダーの能力にも限界があり、何でも出来るわけではないということを理解することがまず大切です。そこでフォロワーが自身の業務にプラスして、他の仕事も積極的に引き受ける事が重要になってきます。 2. リーダーに積極的に意見を伝えること フォロワーがリーダーに批判や提言を行うことでリーダーは常に健全な緊張感をもつことができ、組織の中で自浄効果も働きます。 3. リーダーの指示をチーム全体に浸透・波及させること フォロワーがリーダーに指示の背景にある目的や意図を確認し、それをチーム全体に浸透させる役割を担いましょう。 では、今日のまとめです。 変化の激しい現代においては、リーダーシップだけではなく、フォロワーシップも必要不可欠というお話でした。よいリーダーになるためにも、まずはよいフォロワーシップを身につける事をお薦めします。フォロワーシップが発揮出来るようになると、自ずとリーダーへの道も切り開けてくると思います。
今日は、前回に引き続き「家事テクノロジー」についてのお話です。 前回は、19世紀後半のアメリカでは家事テクノロジーが進化して便利な道具がたくさん普及したにもかかわらず、主婦の忙しさは変わらずむしろより大変な状況になってしまったというお話でした。小麦粉と調理用コンロが普及した結果、それ以前は簡単な夕食で済ませていたのにふかふかの発酵パンと温かい手料理、アップルパイを焼いてくれるのが良いお母さんという考え方が世間一般に広まってしまい、より大変になってしまいました。 今回は、それから100年後の20世紀後半、特に第二次世界大戦後のアメリカのお話です。第二次世界大戦後のアメリカの一般家庭には、水洗トイレと電気冷蔵庫、洗濯機、掃除機が普及しました。その結果、綺麗に掃除されたお部屋でいつも清潔な服を着て、おいしい食事が毎日用意されていることが庶民の豊かな生活のスタンダードになっていきます。さらに、子供の教育にも手をかけるようになり、宿題をさせて作文を書かせたり、クラブ活動に送っていったりと親は大忙しになり、それら全部が家庭の主婦一人の仕事となりました。そして結婚した女性はこうあって当然という暗黙の了解が形成されていきます。家族一人一人の体調をチェックして家族の健康を守り、トイレは清潔でリビングルームはいつも丁寧にお掃除されていて夫のシャツにはぱりっとアイロンがかかっていて、子どもたちの靴下は真っ白を履き、温かい夕食とアップルパイ、こどものお誕生日は手作りケーキで祝い、草野球に行く子どもの送り迎えも欠かさないといったお母さん像ができあがっていきます。非常に理想的な母親像で聞いていて苦しくなりますね。 特にこの1950~60年代あたりは、いわゆる「家事テクノロジー」、具体的には家電製品が飛躍的に進歩していきます。日本でも電気炊飯器が発売された時期にあたります。テクノロジーの進化はその時代の社会の状況を反映しており、1960年代に進化が加速した家事テクノロジーは1960年代の社会制度、つまり「いつも家にいて家族に尽くしてくれる素敵なお母さん」が当たり前だった社会を前提に進化していきます。その結果、家電製品は便利になりましたが、フルタイムの主婦が使うように進化したため、家事労働は減りませんでした。洗濯機は便利ですが、洗ったあとに干さなければなりませんし、アイロンがけも必要です。調理コンロは便利ですが、材料を切って煮炊きをした後、後始始末や掃除をする必要があり、時間はそれほど短縮されませんでした。掃除機も便利ですが、隅のホコリは手で拭き取らなければなりませんし、ゴミの処理や掃除機本体のお手入れにも時間がかかります。1965年の大規模な調査によれば、この時代アメリカの主婦は家事育児に7時間半から8時間をかけていたようです。ちなみに、現代日本の子育て世帯では、主婦の家事労働時間は約7時間との統計結果があり、今とそれほど変わりません。 テクノロジーが劇的に進化した割には家事労働の時間は短くなってはいません。では、なぜこのような変なことになっているかというと、繰り返しになりますが、テクノロジーはその時の社会制度を反映しながら進化するためです。1950~60年代は、フルタイムの主婦が家族のために献身的に尽くす状況の中で進化した家事テクノロジーのため、今でも人が手をかけないといけないような仕様になっています。これがもし男性も女性も等しく外で働く、つまり女性も男性と対等の賃金を受け取るような状況だったならば全く違った進化を遂げていたと私は想像します。そもそも各家庭それぞれ洗濯機も掃除機も電子レンジも調理器も備えていて、わずか数人しかいない家族のためにオーダーメイドの家事サービスをお母さんが提供する今の仕組みは、女性の賃金が高い場合はありえません。不可能です。もし戦後からずっと男女平等であったならば、家事は専門の業者が専門の機械を使ってやってくれるか、あるいは男女ともに公平に分担しながらやるかのいずれかになっていたはずです。家事テクノロジーも専門業者が使うような高度な装置になっていたかもしれませんし、あるいは男性も喜んで使うような仕様・デザインになっていたかもしれません。しかしよく考えると、特にコロナを経験した後は食事の宅配も増えましたし、男性でも簡単においしい調理が出来るような調味料も増えてきました。洗剤も洗濯初心者の男性でも量を間違えないようなジェルボール型が増えていますし、シワが寄りにくい洗濯機もでてきました。ようやく家事テクノロジーも男女が平等に家事を分担する方向へ進化しはじめたのかもしれません。 では、今日のまとめです。 第二次世界大戦後のアメリカでは、水洗トイレと電気冷蔵庫、洗濯機、掃除機が一般家庭に普及しました。その結果、献身的に家族に尽くすフルタイムのお母さんがスタンダードになりました。そうした社会状況の中で家事テクノロジーは進化したため、便利な道具は登場しても女性が家事労働に費やす時間は減りませんでした。しかし、近年男女が平等に家事を分担出来るような製品やサービスが次々と誕生しています。家事テクノロジーもようやく男女が平等に家事を分担できる方向へ進化しはじめている可能性もあります。
今日は「家事テクノロジー」についてお話いたします。 みなさんのご家庭では、家事は主にどなたが担われているでしょうか。 私の夫や息子はよく家事をしてくれる方なのですが、私も休日にはずっと家事をしています。家事をこなしながら「洗濯機も掃除機も冷蔵庫も電子レンジもあるのに、どうしてこんなに忙しいのだろう?どうして家事はエンドレスなのだろう?」といつも不思議に思っています。 総務省が「社会生活基本調査」を実施しているのですが、2021年度に6歳未満の子供が居たご家庭では、妻は1日7時間以上の時間を家事に使っているという結果が出ています。この20年間、ほとんど家事労働の時間は短くなっていません。「イノベーション論」の考え方では、これは非常に奇妙な現象です。理論上は、道具が進化して自動化されると、人間はつらい労働から解放されて余暇を増やすことが出来るはずなのです。 100年前と比較すると家事の仕事1つ1つは確実に楽になっているにもかかわらず、私たちは21世紀の今でも家事に多くの時間を費やしています。そこで、家事労働が減らない原因について、少し調べてみました。今日は恨みの気持ちも込めて"家事が減らない原因"を「犯人」と呼びますが、犯人はたくさんいました。 犯人の正体を明かす前に、まずは家事テクノロジーについてお話します。ここからはアメリカの話です。今から150年程前のアメリカでは、家事労働に使う便利な道具や材料が多く発明されて普及しました。この時代はまだ家庭には電気が普及しておらず、今のように電気で全自動というわけではありませんが、洗濯1つとっても、以前はたらいと洗濯板で洋服を1枚1枚手で洗って絞っていた重労働が、手回しの洗濯機に任せることが出来るようになり、大変な省力化でした。同様に、粒の細かいきれいな小麦粉がお店で買えるようになったのも大変な進歩でした。それ以前は、各家庭でライ麦やトウモロコシ等をつぶして臼でひいて粗い粉にしてからパンを作っていたため、小麦粉の発売は画期的なことでした。ところがこの時代のアメリカの女性、特に家庭の主婦はとっても疲れていて不健康だったと言います。当時の日記には、『私は毎日疲れてほとんど死んでしまいそうだけど明日にはまた働かなくてはいけない』という感じの記録が多く残っています。便利な道具がたくさん普及したにもかかわらず、主婦は忙しくて死んでしまいそうというのは実に変です。これにはたくさんの犯人がいました。最初に上げる犯人は「小麦粉」です。正確に言うと、買ってきた小麦粉で発酵パンを焼くようになったことで家事労働の負担が増したということです。18~19世紀初頭まで、アメリカの庶民の家では夫がとうもろこしやライ麦を臼でひいて全粒粉にし、それを妻がパンにして焼いていました。この全粒粉のパンは焼くのが非常に簡単だったそうです。その代わりボソボソであまりおいしくなかったようです。ところが、19世紀半ばになると技術革新と国際情勢の変化により工場で製粉されたきめの細かい小麦粉がアメリカ国内で安く買えるようになりました。その結果、庶民の家庭でも主婦が発酵パンを焼くようになりました。発酵パンは大変手間のかかる料理です。しかし、いったん白い発酵パンが家庭で作られるようになると、それがステータスシンボルになってしまいました。この時期のアメリカの家事マニュアルには、パンはふっくらして軽く甘く柔らかい、教養のある洗練されたレディはよくこねて作るふっくらしたパンを焼くといったことが書いてあります。犯人の第一は「小麦粉を焼いて作る発酵パン」でした。 もう1つ「犯人」を上げると、それは「調理用のコンロ」です。それ以前は、暖炉の火で調理をしていたため、庶民の家のおかずはシチューだけでした。しかし19世紀に調理用コンロが登場して、火加減の調節が出来るようになると、主婦は「シチュー」と添え物の「ジャガイモ」とデザートの「アップルパイ」という3品を同時に作るようになりました。これが夕食のスタンダードになっていったわけです。そしてお母さんは温かい手料理とアップルパイを焼いてくれる存在となっていきました。その結果、家事テクノロジーが発達しても、お母さんはいつも忙しいという状況が生まれました。 では、今日のまとめです。 家事テクノロジーの発達により便利な道具がたくさん開発されましたが、主婦が家事に費やす時間は劇的には減っていません。19世紀のアメリカでは、工場で生産した小麦粉と調理用コンロの普及により家庭全体での家事労働の負担は減りました。しかし、主婦は手間の掛かる発酵パンを焼き、料理品目を増やすことになりました。それがスタンダードな主婦像となってしまったため、家事テクノロジーが発達してもお母さんはいつも忙しいという状況が生まれました。
今回は広告やパッケージに印刷される人物やキャラクターの視線の違いが消費者の購買行動に与える影響について話します。簡単に言えば購入者側に視線が合わさっているかそうではないかということです。最初に古い話ですが、1994年に起こったアメリカでの出来事について話します。この年、アメリカのフロリダに住んでいるダイアナ=ダイサンという女性がいて、この人が台所でチーズトーストを食べようとオーブンからトーストを取り出した時にあることに気づいたそうです。それはトーストから顔が浮き上がっていてその顔がダイアンさんをじっと見ていたそうです。焼き目が人の顔に見えて、しかもそれが自分をじっと見つめていたと。少なくともダイアナさんはそう感じたそうです。それからカジノで7万ドルが当たるなど、すごく良いことが舞い込んだらしいです。その後、その人の顔が浮かんだというトーストをこの人は何年間も大事に取っておいて、それをオークションで出品したらしいです。そうすると10万件を超える入札があって、最終的に28,000ドル、今の日本円の換算でいえばおよそ400万円で落札されたそうです。 ダイアナさんにとってはこのトーストに浮かんだ顔は幸運をもたらしてくれた顔といってもいいかもしれません。 こういった偶然できたパターン、壁のシミや焼き目やそういった偶然できたパターンを顔や動物や他のもののように認識してしまうことを、心理用語でパレイドリアと呼んでいます。もともとこのパレイドリアは人が生存していく上で身につけたものだと言われています。驚異検出と言いますが、人にとって驚異になりそうなものを素早く発見する能力を人は進化させてきました。茂みに隠れて一部しか見えていない動物や怒った顔の人間など、人にとっては非常に危険なわけです。そういったものを素早く認識するためにパレイドリアという能力が生まれたと考えられています。 広告や商品のパッケージの中に人の顔が入って入れば、受け手側はより注意してその広告を注目することになります。特に顔の中でも視線や目は一番受け手側の注意を引きつけやすいそうです。もう1つ視線が売上げに与える影響について興味深い実験をご紹介します。モジカスとタルアとワンシンプという3人の研究者がアメリカで行った2015年の実験です。この3人の研究者は、子供向けのコーンフレーク、シリアルに印刷された漫画のキャラクターがなんとなく上から下を見下ろすような視線を向けているパターンが多いことに気づきました。それに興味をもって、どうしてなのか調べたそうです。その結果、コーンフレークに挿されたキャラクターの目線が商品のターゲットになる子供とその印刷されたキャラクターの目線が合うように作られたそうです。この3人の研究者の実験でも、シリアルのマスコットキャラクターがその視線を子供たちに向けているバージョンと子供たちでは無くほかのものに視線を向けているパターンで比較してみると子供たちに視線を向けているバージョンの方が子供たちに選ばれる確率が13%も高くなったそうです。 しかし、お客さんのほうに視線を向けている方が必ず効果的なのかというと、そうとも言い切れないようです。別の研究でヴァネッサ・パトリックという人がアメリカで行った実験があります。彼女は2007~2019年の間にかけて使われた世界中の広告を分析しました。それによると消費者側に視線を向けた広告は12%に過ぎなかったそうです。逆に消費者側から視線をそらした広告は48%もあったそうです。ではどうして広告モデルが視線を反らす広告が多いのか、それを検証するために彼女は5つの実験を行いました。その結果、消費者や広告の受け手側にとっては広告のモデルやキャラクターやそういった人たちの視線がそらされている方が広告が語るようなストーリーに入り込みやすくなったそうです。特に感情的な広告では効果が高かったようです。実験を行ったパトリックの説明では、演劇で俳優が観客に視線を合わせないのと同じ効果だと説明しています。つまり、観客にとっては俳優と視線が合わないということで、演じられている架空の空間を客観的に観察する、それと同様の効果が広告で生じたと説明しています。実験では逆に情報の発信側の信頼性を高めたい場合は広告モデルの視線が受け手側、お客さん側に視線を合わせた広告の方が効果が高いということがあきらかになっています。 今日のまとめです。本日は広告モデルの視線が広告の受け手側に与える影響について話しました。広告主にとって自分たちの世界観やストーリーに共感してもらいたいと考える場合は広告モデルの視線を受け手側からそらす方が効果的です。広告主にとって自分たちが発信する情報の信頼性を高めたい場合は、逆に広告モデルは受け手側と視線を合うように作ったほうが良いということになります。
これまで4回にわたり「コミュニケーション(人に伝えること)」をテーマにお話をしてきました。最終回の今日は「オンラインでの伝え方」についてお話します。 コロナの影響もあり、Zoom等を使ったオンラインのミーティングが一気に日常化しました。一方で、画面をオフにされると、ただでさえ反応がわかりにくい上に表情が見えなくなるため非常にやりにくいものの、結局どのように進めたらよいかわからずに通常の会議と同じように淡々と進めてしまっているというケースもあるのではないかと思います。「オンラインでの伝え方」は何をどのように考えて工夫していけばいいのでしょうか。 では、早速事例を元に考えてみましょう。私もコロナ禍でオンラインでの授業を実施する機会が増えてきました。授業という観点でいくと、「どのように発言してもらうか」というのが1つのポイントになります。そこで我々が小学校の頃から慣れ親しんできた「手を挙げてあたったら発言をする」というやり方の前提は何なのかについて考えてみましょう。 「教室では手を挙げてから発言しましょう」「先生が喋っている間は私語は慎むように」 こんなことを聴いたことがあるのではないかと思います。この前提はシンプルに言うと、「誰かが話しているときに同時に他の人が話をすると何を言っているかわからなくなる」ということです。つまり、「物理的な空間に複数の人がいる場合に、基本的に話者は一人でなければならない」という前提の上に成り立っているやり方です。一方で、オンラインという場を考えると、チャットを使うことが出来ます。チャットが使えるというふうに表現してしまうと機能の問題になってしまいますが、コミュニケーションのパスを2系統存在させることが出来るというふうに捉えることも出来ます。我々はコミュニケーションのパスは1系統という前提で育ってきているわけですが、2系統存在させられるかもしれないということを前提にコミュニケーションのあり方を考え直すことが出来るというのが、オンラインでの新たな可能性です。つまり、オンラインでどのようにすればいいのかということを考える出発点は、オンラインの環境がこれまで慣れ親しんできた環境とどのように違っているのか両者の違いをしっかりと認識して、オンラインだからこその特徴を活かす伝え方を模索していくことです。 では、オンラインの特徴をいくつか紹介していきます。1つ目は今お伝えしたように「2系統のコミュニケーションパスが存在する」ということです。会議の中でいきなりチャットを使うというのはなかなか唐突感があるかもしれませんが、オンラインならではのメリットのため、併用が出来ないかという視点を持っておくようにしましょう。 2つ目は「言語情報への依存度が上がる」ということが起きます。対面でのコミュニケーションの場合は、場が共有できていることで非言語の情報が伝えられます。非言語の情報は感情を伝えると言われています。一方で、画面越しのオンラインの場合は非言語の情報の伝達が難しく、結果的に「言語情報への依存度が上がる」ことになります。したがって、「より平易な言葉を使う」、「言葉を適切に使う」、「話の構成とストーリーをしっかり設計する」といったことが重要です。対面で話していると、そこに流れている空気感みたいなものがあり、それを感じながらコミュニケーションをとることが出来ますが、オンラインだとやはりそこが難しいため、言葉をより的確に伝えるということが求められます。 3つ目は、「全員が平等である」というポイントがあります。Zoomの画面を思い浮かべていただくと、上下関係がなく、見ためが平等に見えます。会議室では上座に部長が座るなどなんとなく組織の階層がそのまま着席する場所に表れたりします。オンラインは全員が平等であると感じやすいフォーマットのため、積極的に色んな人に発言してもらうことが出来やすい場だと捉えることも可能です。 4つ目は、オンラインは「全員が最前列に座って会議に参加している」イメージで捉えることが出来ます。そう考えると、いい意味でのプレッシャーにもなり、それに応えるだけの内容になっているのかという具合に自らの話す内容を考え直すきっかけにもなるかと思います。また、物理的な空間に集ってしまうと、遠くの人にも読めるようにフォントを大きくしようと資料を作っていきますが、オンラインの場合は皆が目の前にいることになるため、フォントを小さくして細かな情報を盛り込むことができる環境でもあります。そのため、その環境が変わっているにもかかわらず同じ資料を使って説明をしているのであれば、それは最善を尽くしているということにはならないかもしれません。 以上、オンラインの環境の特徴の例とその特徴を踏まえたときにどのようなことを意識するべきかというお話でした。 では、今日のまとめです。 オンラインでどうコミュニケーションをとればいいのかということを考える場合には、まず「これまでと同じことを続けていないか」という意識を持つようにしましょう。その上でオンラインならではの特徴を丁寧に考えて、「新しいフォーマットに適した伝え方は何なのか」ということをしっかりと模索していくようにして下さい。
「コミュニケーション(人に伝える)」をテーマに4回に渡ってお話しています。3回目の今日は、「コミュニケーションに臨むにあたってどういう準備をしていけばいいのか」ということについてお話しします。 準備することは、その後の学習にも繋がってきます。では、どのような工夫をしていけばいいのでしょうか。 行き当たりばったりでコミュニケーションを繰り返すのは得策ではありません。何故ならば、経験を次に活かしにくいためです。逆に、事前に少し準備することがコミュニケーションの成功への確率を高めてくれます。また、仮に上手くいかなかったとしても、その経験が次に活かせるようになります。 では、早速事例で考えてみましょう。 皆さんはとあるパンのメーカーの営業だと仮定してみて下さい。郊外に複数の喫茶店を展開するとあるコーヒー店に、サイドメニューとして自社のパンを置いてもらえないかと考えているといます。飛び込みの営業をするわけですが、どういう点をアピールすれば良いのかを少し考えてみて下さい。 こういった場合、どうしても自分の商品を一生懸命説明するということをやってしまいがちです。どのような商品なのか、他の商品と比べて何がよいのかといった内容です。しかし、これまで繰り返しお話ししてきたようにコミュニケーションは受け手が決めます。あなたが話したいことは聞き手が聴きたいことではないかもしれません。そこで、ここでは「受け手」、つまり「店主」の立場にたって、店主として聴いてみたいことが何なのかを問いの形で複数挙げていくということを事前にやってみましょう。 店主の立場に立って考えてみると、例えば「売れるのか」「儲かるのか」は気になることと考えられます。また、「お客さんは増えるのか」、「お客さんは喜んでくれるのか」、「そもそもパンは美味しいのか」といったことも関心の対象になるかもしれません。また、今回は店主からすると飛び込みの営業になるわけですから、「発注数等について柔軟性はあるのか」、取引をはじめた後急に止めることはないのかなど「継続的な取引は出来るのか」といったことも関心事項として考えられます。 ここまでで7つの関心事項を洗い出すことができました。一方で、この全てを話すことはあまり現実的ではありません。飛び込みの営業に対して7つ全てを根気強く聞いてもらえるという保証はないためです。そうなるとここからいくつかを選択して話していく必要があります。では、どれを選ぶのかということについては判断が必要になってきます。実際の場面では、より重要と思われるものをいくつか選択してコミュニケーションをとっていくわけです。 「準備」は、シンプルに相手の立場から関心のありそうな事項を複数洗い出した上で、重要と思われるものをいくつか選ぶということになります。その上で、コミュニケーションの場に臨むということを心がけてみてください。 次に、この「アプローチの効用」を考えていきましょう。相手の気にしそうなポイントを複数洗い出した上でコミュニケーションに臨むことのメリットと、洗い出しをしないで行き当たりばったりでコミュニケーションをした場合との比較で考えてもらうとイメージがしやすくなると思います。 まず一つ目は「柔軟性」です。相手の反応にあわせて話が変えられます。その場合にもし事前に気にしそうなポイントが洗い出されているのであれば、相手の反応を見ながら違うポイントを出していくことが出来ます。また相手が質問する事項についても、事前に想定していることによって答えられる可能性が上がってきます。何も準備をしていないと、その場での瞬発力に頼らざるを得なくなってしまいます。そうするとどうしてもあたふたしてしまいます。 二つ目のメリットは、事前準備をすることは「精神的な余裕」にも繋がるということです。事前にある程度の思考投入が出来ているため、まずは余裕を持ってその場に臨むことが出来ます。想定外の事項が起こった場合、準備を何もしていないと焦って頭が真っ白になってしまうといった可能性もあります。 三つ目のメリットは、コミュニケーションが終わった後の振り返りという観点で考えてみましょう。何も準備をしないで思いつきで臨んだ場合には、「上手くいった/いかなかった」という結果の評価だけに終わってしまう可能性があります。一方で、しっかりと準備して臨んだ場合は、「そもそも考えられていたポイント自体が間違っていたのか」、ある程度想定は持てていたけれども「話そうと選んだポイントが間違っていたのか」、「話そうとしたポイントの順番が違っていたのか」といった具合に幾つかのポイントで振り返ることが出来、コミュニケーションをとった経験が次に活かすことができます。これが最大のメリットと言ってもいいかもしれません。 では、今日のまとめです。 コミュニケーションの準備として相手の立場から考えられる関心事を複数洗い出し、その中から幾つかを選択して話をするという準備を心がけて下さい。それは柔軟性にも繋がりますし、想定外の事項に対しても余裕を与えてくれます。そして上手くいってもいかなくても次に繋がっていく、このちょっとした準備を繰りかえすということで成長のスピードというのが大きく変わると思います。
今日はイギリスにおける異文化シリーズ・ロンドン編で、グローブ座を扱いたいのですが、グローブ座をご存じでしょうか。「座」がついていますので、グローブ座は劇場です。シェイクスピアの演劇がかかっていた当時のロンドンの劇場の名前ですが、実はこれが現在再建されています。勿論何もかも同じというわけではないですし、場所も少しずれているのですが、今日はそれをご紹介しようと思います。 グローブ座は元々シェイクスピアが建てた劇場というか、シェイクスピアが属していた劇団が作ったようです。シェイクスピアといえばイギリスというか、世界でナンバーワンと言ってもいいような劇作家です。 イギリスに文化が栄えた時代が2つあって、一つはエリザベス一世、一つはヴィクトリア女王の時代ですけれど、ヴィクトリア女王の時代はディケンズです。「クリスマスキャロル」などで有名です。そちらではない、エリザベス一世の頃の文化を担った人がシェイクスピアです。16世紀末くらいに活躍した人だと思って下さい。 彼は元々ストラトフォード=アポン=エイヴォンという所の生まれですが、ロンドンへ出て劇作家になりました。今、シェイクスピア関係の劇の上演はストラトフォード=アポン=エイヴォンとロンドン、どちらでも盛んに行われていますが、グローブ座というのはロンドンの方にある劇場になります。グローブ座は元々テムズ川のほとりにあったのですが、段々地形が変わっていったりして、再建するときにやはり元あったように川岸がいいだろうとちょっと移動したようです。昔の建物は火事などで無くなったり、取り壊しにあったりもしているので、当時の場所に行っても建物は建っていません。 グローブ座は劇場として当時はこれで良かったのでしょうけれど、屋根がありません。野外劇場ともちょっと違っていて、例えば野球のスタジアムで言うと、観客席の所は屋根があるけれど、フィールドの所は屋根が無いというのを想像してもらえればいいです。ところが屋根が無い部分というのが一番舞台に近い所ですが、そこが実は立ち見で、一番安い席ですけれど、立っていなければいけません。多分一般庶民がそこに大挙して押し寄せて、座席のある屋根付きの遠い席に、ある程度お金がある人達が座ったのではないかなと想像しています。 今も料金は、かぶりつき的な青空天井のところが安いのですが、その席はなかなかいいです。どうしてかというと、役者さんが登場するときに時折その観客が立っている所をかきわけて入ってきたりすることがあるからです。運が良いと役者さんが目の前に現れて、お相撲ではないけれど、背中をポンポンくらい出来そうな感じの位置関係です。庶民としては、屋根は無かったけれど、そういうことで楽しかっただろうと思いますが、イギリスで雨が降ってきて、どうにも困って避難しないといけないというようなことは滅多にないので、これはこれで良かったのだろうなとは思います。 こういったかぶりつきのところで立って見るというのは良い扱いなのか、悪い扱いなのかわかりませんが、楽しそうです。私も行くのであれば、かぶりつきの方がいいと思って、実際私が「ベニスの商人」をグローブ座で観た時もわざわざ立ち見席で観ました。実はロンドンではコンサートなんかも、こうやってかぶりつき的なところにちょっと立ち見席があったりすることがあって、中々面白いシステムだというふうに思っています。ちなみにかぶりつきの席は今で言うと5ポンドとか10ポンドくらいの値段ですので、映画一本よりも安いかなという感じです。日本円にしたら1,000円弱~1,000円台半ばくらいというところです。 もちろん上演しているのはシェイクスピアの作品、或いはそれに関係した作品が殆どです。ですから、皆さんもうストーリーは知っているわけですが、それは落語でも中身は知っているけれど、それをどうやって捌くのかを楽しみに行くということが多いと思うのですが、それと同じです。僕はベニスの商人は知っていたけれど、知っていたからつまらなかったか?というとやはり面白かったです。この話を一体どうするのだろう?この役者は?というようなところがあり、とても楽しかったです。 実は今ご紹介しているグローブ座とちょっと時代が違うものですが、東京にも「東京グローブ座」というのがあって、それを真似して作っています。最近ハリー・ポッターのスタジオも東京に出来て、それと同じで、現地にあるグローブ座の東京版、と言えるかどうかわかりませんが、良かったら皆さん検索で調べて、東京に行った際にああこういうものかと眺めて頂くのもいいのかなと思っています。 今日のまとめ: 今日はイギリスで一番有名な、もしくは世界で一番有名な文人であるウィリアム・シェイクスピア縁の劇場、グローブ座、ロンドンにあるのですが、こちらの紹介をさせて頂きました。
前回「シンドラーのリスト」をとりあげて、外国の映画と日本の映画と1本ずつ、戦争に関係したものをという話で、今回は日本映画です。英語のタイトルを"Summer of the Moonlight Sonata"と言うのですが、実はこれは「月光の夏」の直訳です。海外では実際に上映されていないので、恐らく誰かが何かの都合でつけたものがそのまま色々なところに記録として、英語タイトルとして残っているのだと思います。このような例はよくあります。海外で上映された映画は、必ず海外でつけたタイトルが残っているものです。海外で上映された事がない作品は、海外のデータベース等で英語タイトルという所に記載がある場合は、恐らく直訳を誰かがつけたものが残っているのだと思いますが、誰がつけたのかが分からないです。直訳だから誰がつけても同じ様な事なのでしょうけれど、ちょっと考えさせられたという事を最初にお話しました。 ところで、この映画は特攻兵を描いた映画ですけれど、特攻兵を英語で何ていうかご存じでしょうか?あの「神風」を使って"kamikaze pilot"と申します。 では作品の話ですが、これは1993年に公開されていまして、福岡やこの地域には縁のある作品で、元々大手の映画会社でつくった作品ではなくて、地元の人達に募金を呼びかけて制作費を出してつくったという、当時としてはかなり珍しい作品です。今で言うと、クラウドファンディングがありますが、当時は中々そういう形というのは珍しかったと思います。しかも地域を限って行われたという事が特徴になっています。それだけその地元に、この作品を映画にして欲しいという人が多かったのだと思います。 原作はやはり同じタイトルのものがありまして、事実を基にしたフィクションです。特攻兵の人達があるピアノをこの世の名残に弾きに来られた、という話にまつわるピアノが廃棄処分になるということになり、それはもったいないので保存運動になったという話が当時報道され、それをきっかけに映画をつくろうという話になりました。 監督はこの手の非常に真面目な社会派の映画を地味に撮ってこられた、神山征二郎さんという方でして、キャストとしてはかなり大物の方で、仲代達矢さんとか渡辺美佐子さんとか田村高廣さんとか、錚々たるメンバーが出てきている作品になっています。私はこの監督の作品の中で一番良く出来た作品だと個人的には思っておりまして、特攻という重いテーマを描いてはいるのですが、非常に感動的な作品です。 ただ、こういう作品にありがちな事ですが、事実を基にしたフィクションなので、細かい設定が当時と色々違うわけで、そこの所を捉えてこの映画をあまり評価出来ないのでは、という意見の方もいらっしゃると思いますが、フィクションの入ったドラマとして観た時に、私は大変優秀な作品だと思っています。 先ほど申し上げたように、特攻兵の2人がある学校にやってきて、この世の名残に1曲弾かせてくれと言ってその時に弾いた曲がベートーヴェンの「月光」です。それがタイトルになっています。ところがそのうちの1人は亡くなってしまいます。そして、その時に立ち会った音楽教師とこの問題について追う事になった作家が生き残りの方を探すという話で、最後にその方を探し当てるのですが、その方は当時の事を話したくない、最初は何も覚えていないと言うのです。この辺は、高倉健の「ホタル」という映画でもそうですが、実際に特攻に行って生き残った方々が口を開くというのは、すごく難しい事だという事が一般にあるようです。 特攻に行って飛行機の不調で目的を遂げずに不時着したり、元に戻ってきたりという人達がいました。当時、そういう人達がいるとその後に続く人達の志気に差し障るという事で、振武寮(しんぶりょう)という所に閉じ込められて、世に出ないようにしたという事があったようで、非常に辛い事です。この作品で実は一番ポイントになったのは、そういう事が扱われて私達もそれを初めて知るようになったという、そのような意義のある作品でした。非常に感動的なので是非皆さんに観る事をお勧めしております。 今日のまとめ: 今、ロシアとウクライナの問題もありますけれども、少し戦争というものに目を向けたいと思って、今回、日本の映画「月光の夏」をご紹介しました。配信等でも観られると思いますので是非ご覧下さい。
前回のお話は、来年にも直面することになる物流の「2024年問題」について、これまでと少し違った視点で考えるというお話しでした。それにしても、日本の国内の物流は主にトラック輸送が担っていて、またそれによる環境負荷は非常に大きいというお話しでした。 SDGsで言われる持続的な成長ということを考える際に、国内の物流はいままでいわばぎりぎりの状態で維持されてきたともいえます。そのバランスがいよいよ崩れそうな状態にあるということで、「2024年問題」がクローズアップされています。 ただこのタイミングは、改めて物流に関わる構造的な問題を見直す良い機会ということもできるかと思います。物流というのは言ってみれば、産業や生活面を支える基盤の部分であるからです。昨日は環境面の負荷についてご説明しましたが、他にも人材の課題や物流業界にも大きな負担があります。 厚生労働省の調査によると、全産業の労働者の平均年齢43.2歳に対して、大型トラックドライバーの平均は49.4歳と6歳強上回ります。それに対して、大型トラックドライバーの所定内給与は、月当たり1割低い27万円であり、また時間外労働時間は全体の10時間に対して35時間と大きく上回っていることになります。2024年4月に働き方改革関連法が施行されて、時間外労働の上限規制がかかると、この格差がさらに広がる可能性があります。それがさらにトラックドライバーの高齢化を促し、若者がこの職を敬遠することにもなりかねないということになります。この話からも、日本の物流を支えるトラック輸送は、ドライバーの人たちに大きな負担がかかっていることがわかります。それは個人だけの問題ではなく、物流業界への負担の上になりたっているともいえます。 全日本トラック協会の報告書によると、トラック運送業の事業者数は、2020年の時点で、62,844社あるようです。そして緑ナンバーの営業用のトラックは、149万台登録されているとのことです。そのことから、トラック運送業の99パーセントまでが中小企業であり、その多くが大手の物流企業やメーカーや流通業者との契約の中で、輸送を請け負っていることになります。そのように考えると、厳しい競争環境があり、また発注者に対する交渉力がない中で、かなり厳しい契約条件で貨物を輸送していることが推測されます。 普段、トラックの業界について意識することはありませんが、名前が知られているような大手の企業は限られているということです。宅配便を配達していただくのも、実際にはトラックやワゴン車に、別の会社名が書かれているのを見かけることが少なくありません。国内で6万社を超える物流業界には、そのような構造があるということになります。大手企業からの依頼に基づいてコスト削減を図ろうとすれば、どうしても現場への負担が避けられず、厳しい条件で受託するということも避けられないということになります。 現在の経営環境にあっては、小売などの流通業もコスト増の中でも、それを価格に転化して値上げができないという状況が、物流に影響していることになります。好景気で経済の成長の時代であれば、コストとしてはっきり認識されることが、コロナも含めて厳しい状況のため、その皺寄せがきているということです。 繰り返しになりますが、「2024年問題」は、そのようなぎりぎりのバランスでなりたっていたところに、働き方改革関連法が施行されることになったということです。ただそれは、いままでに構造的な問題あるにも関わらず、顕在化してこなかったことであり、今がその見直しの機会になるという見方ができます。これからの持続的な成長ということを考えると、それは業界だけの問題だけではなく、今まで当然のこととして享受してきた利便性についても、わたしたちももう一度考えるということだと思います。それは業界の努力だけではなく、消費者や個人の意識にも関わるということです。通販で注文する場合に、配送料無料になっている場合、そのコストは誰がどこで負担されているのでしょうか。即日・翌日で商品を受け取ることや日時指定のデリバリーのためには、現場ではおそらくかなり複雑な配送を余儀なくされているのだと思います。指定日時の不在による再配送に、追加料金が課されないのも、それは当たり前のことでしょうか。以前は地産地消で、地元で消費されていた野菜、果物、魚介類といった生鮮品も、今は地域を超えて手に入るということも当たり前になっています。 今挙げられたことのどれも、わたしたちは当たり前のこととして受け止めてきましたが、それは当たり前ではなく、社会的な負荷もあるということです。やはり必要なコストは負担をする必要がありますし、利便性を追求するために無理が生じているのだとすれば、そこまでは求めないということも考えるべきだと思います。それがバランスの取れた形で、持続的な成長を進めていくことだと思います。 では、今日のまとめです。 来年に迫った「2024年問題」は、国内物流には構造的な問題がありながら、ぎりぎりのバランスでなりたって顕在化してこなかったことであり、その見直しの機会になるという見方ができます。持続的な成長ということを考えると、それは業界だけの問題だけではなく、日常生活で利便性を享受することについて、わたしたちの意識改革も必要ということだと思います。
5月のモーニングビジネススクールの放送で、今そこにある危機にある危機として、「物流の2024年問題」を取り上げました。もともとトラックドライバーのなり手が不足している上に、法律の改正によってさまざまな社会的な問題が生じる可能性があり、宅配便や流通の需要に対して、輸送が追いつかなくなるというお話でした。これは非常に深刻な問題のため、最近はニュースでも取り上げられる機会が増えてきました。今回はこの問題について、改めて少し別の視点からお話します。 もう一年を切りましたが、来年2024年4月に、働き方改革関連法が施行されることで、トラックドライバーの時間外労働時間に上限規制が設けられることになります。そうなるとトラックドライバーの高齢化や人手不足などの構造的な問題もあり、現在のような運賃や時間での商品の輸送が継続できないかもしれません。 コロナが終息に向かうことで経済活動も活発になって来ることが想定されます。そうなるとますます心配になります。コロナ禍の在宅勤務もあり、国内のEC取引はコロナ前の6パーセント台の伸びから、2020年の8.1パーセント、2021年の8.8パーセントとさらに増加しました。皆さんも、自宅で仕事をされる際に、オンラインショッピングによる宅配便の受け取りで、そのことを実感されていると思います。 このペースで行くと、いよいよ「2024年問題」で心配されたような状況が、避けられないということになるのでしょうか。現在、官民をあげてさまざまな取り組みがされているため、実際にどの程度の問題になるかは分かりません。 もっとも深刻な状況を考えると、B to Cの消費者向けの宅配便だけではなく、産地や生産者から店舗までのB to Bの生鮮品を含めた商品の配送や、原材料の輸送といった産業用の物流にまで支障が出ることも考えられます。 具体的には、配送のリードタイムや運賃といったコストへの影響から、今の価格で商品が手に入らない、時間指定どころか配達までかなりの時間を要するといったことです。 いずれにせよぎりぎりの状況で、現在の国内の物流が行われているということになります。 今まで私たちが当たり前だと思ってきたことが、実は困難な状況の上で、なりたっていたということです。物流というのは、言ってみれば「縁の下の力持ち」といった基盤の部分ですから、普段から認識することはありませんが、その重要性とともに、利便性を享受することによる社会的な負担も認識する必要があります。 SDGsの持続的な成長ということを考える際に、物流もまたその重要な要素であり、さまざまな取り組みがされていることがあります。「2024年問題」は、改めて物流に関わる構造的な問題を見直す良い機会ということもできるかと思います。 社会的に負荷をかけているものには、物流の中でも輸送に関わることが大きいのではないかと思います。さまざまな環境負荷がありますし、今回問題視されている人材の問題や、物流業に求められる負担もありますが、ひとつひとつ考えていきたいと思います。 環境の第一には、二酸化炭素(Co2)の排出量があります。これはいうまでもなく、地球規模の問題です。国内の輸送量の41億トンの内、トラックが担うのは、91.6パーセントと圧倒的比率です。 2021年度のCo2排出量10億6,400万トンの内、17.4パーセントが運輸関係から発生しています。運輸部門の中には、自家用車からのCo2排出も含まれますので、全体の半分強が、貨物輸送や営業用の交通機関から排出されています。内訳を見ると、主にトラック輸送、国内輸送用の内航海運、鉄道、航空輸送からのCo2排出になります。 国土交通省の調査では、輸送量あたりのCo2の排出量を見ると、トラックが鉄道の56倍、船舶の26倍です。トラックは便利で柔軟性がある輸送手段である一方で、鉄道や船舶とは比較にならないCo2排出量といえます。船舶についても、最近は燃料の重油のCo2排出量を抑える装置の装着や、燃料の質を重油から液化天然ガスの利用に変えるとか、さまざまな取り組みがされています。ただ圧倒的な輸送量を持つトラック輸送に関しては、やはりこの輸送の依存度を下げることや輸送方式の工夫、積載率を上げること、大型のトレーラーを導入など、抜本的な方策が求められています。 数字で示されるとやはりトラック輸送に依存していることで、環境への影響も かなり大きいということがわかります。 次に挙げるのは、トラック輸送による交通渋滞や事故のリスクです。長距離輸送に伴うドライバーの疲労もそうですが、高速道路に多くのトラックが通行することに伴う危険も避けられないことになります。政府では、トラックの高速道路の通行速度の引き上げなども検討されているようですが、それは適切なのでしょうか。環境以外にも人材の課題や物流業界の負担もあるということです。 では、今日のまとめです。 SDGsで言われる持続的な成長ということを考える際に、物流もまたそれを担う重要な要素であり、今回の「2024年問題」は、改めて物流に関わる構造的な問題を見直す良い機会ということもできるかと思います。さまざまな社会的な負荷に目を向けることで、改善に向ける必要があると思います。明日は環境負荷以外にも、人材や物流業界の負担についても、お話ししたいと思います。
「コミュニケーション(人に伝える)」というテーマで4回に渡ってお話しています。2回目の今日は、「事実と意見」についてです。 「事実と意見を混ぜて話をしない」「それは意見であって事実ではないだろう」「事実はわかったけれども意見は何なの?」 いずれも一度は耳にしたことのあるやりとりではないでしょうか。事実とは何で意見とは一体何なのでしょうか。事実と意見の違いを踏まえて、どのようにコミュニケーションをしていけばいいのかということを考えていきます。 では早速、今日も事例を一つご紹介します。 皆さんは、昨日実施したセミナーの報告を上司にしなければならないという状況を仮定してみてください。 報告A:昨日実施したセミナーの参加者は50名でした。 報告B:昨日実施したセミナーには多くの方が参加してくれました。 AとB、どちらの報告の方がいいのでしょうか。このAとBの違いをここでは「事実」と「意見」という視点で考えてみたいと思います。前者Aの内容は、「参加者は50名であった」という事実が語られています。事実は「誰が語っても同じ内容になるもの」です。一方で、後者Bの内容は、「参加者が多かった」と語られています。「多い」というのは語り手の意見が話されていることになります。50名が多いかどうかというのは人によって変わる可能性があります。今、自分が話をしようとしている内容は事実なのか、意見なのか、をまずきちんと分けて認識できるようにしていきましょう。 では次に聞き手の立場から先ほどの2つの報告を受けた場合にどのように感じるかという視点で考えてみましょう。 報告Aの「昨日実施したセミナーの参加者は50名でした」と聞いた場合、過去にセミナーの実施状況を知っている人であれば、50名が多いのか少ないのか判断ができます。ただ、過去の様子などを知らない人にとっては、50名という数字をどう評価すればいいのかがわかりません。 一方で後者Bの「昨日のセミナーには多くの方が参加してくれました」という報告には、「多い」という語り手の評価が入っています。意味合いがわかるため、聞き手はどのような方向で受け止めればいいのかというのがわかります。一方で、今度は逆に何をもって多いと言っているのかがわからないということになります。 つまり、どちらも情報としてはやや不足しているわけです。「事実のみ」を伝えると、だから何なんだと「意見」が求められ、「意見のみ」を伝えると大元の事実は何なのかと「事実」が求められることになります。従って、「事実」と「意見」のどちらか一方のみでよいということではなく、両方をそろえて伝えることを意識していきましょう。 では次に、「人はなぜ異なる意見をもつのか」について考えましょう。 「事実」と「意見」という視点から整理すると、意見は事実が起点になっていることがわかります。そう考えると考えられるケースは3つあります。 ① 事実が揃っていないというケース。 そもそも保有している事実・情報が違う可能性があります。一方で、それぞれが持っている情報が異なっているということの方が自然かもしれません。意見交換を始める前に、お互いの持っている情報が同じであるかどうかをきちんと押さえることが必要です。 ② 事実が揃っていたとしても着目している場所が違うことによって意見が変わってくるケース 比喩的な表現になりますが、同じ対象を見ていても上から見る場合と下から見る場合では見えるものは異なります。一般的な傾向として、人は自分の関心のあるところにフォーカスして情報を見るものです。情報量が揃っているだけではなく、まんべんなくお互いが等しく情報を見られているのかという点についても留意しておく必要があります。 ③ 事実が同じで見方も同じだけれども意見の土台となる基準が異なるケース 意見を導き出す基準は人によって様々です。一般的に組織は機能に特化して作られていきます。そうすると、納期を優先するのかコストを優先するのかといった、組織によって優先する判断基準が変わってくるということが普通に起こりえます。また、個人で考えた場合にも、何を優先とするかというのはより多様になります。 では、私たちはどうしたらいいのでしょうか。 私たちは、「意見は人によって異なる」ということを自然に捉えていくことがいいのかもしれません。そして、その違いがどこに起因しているのかをしっかりと理解することが大切です。あなたの立場だったらわたしも同じ意見を持つかもしれないという状況になって初めてお互いが理解し合うことができ、「議論の前提が揃った」といえます。異なる風景を見たまま議論を重ねていくのは不毛なものです。同じ土俵の上に乗った上で意見交換ができるようにしていきましょう。 では、今日のまとめです。 「事実」と「意見」の両方で語るということ。そして意見はそもそも違うものという想定でいること、そして両者の違いは「情報量の差」なのか、「着目している箇所の違い」なのか、「判断基準の違い」なのかということをしっかりと理解していることが大事です。同じ土俵にたって話ができるようにしていきましょう。
はじめまして。グロービス経営大学院の岡と申します。私は新卒でシステムの会社に入り、その後コンサルティング業を経験し、現在グロービスに勤めて23年になります。グロービスの中では、「クリティカルシンキング」、そして「数字の分析」、「ビジネスアナリティクス」、「ファシリテーション」と言った思考系の科目を中心に担当しています。 今日から四回にわたり、「コミュニケーション」というテーマでお話していきます。今回はその第一回目ということで、「コミュニケーションに臨む姿勢をどのように考えていけば良いのか」ということお話しします。 では、早速始めていきましょう。 「コミュニケーション」ということですが、「コミュニケーションが上手い」といわれる人は、一体何が上手いのでしょうか。事実的なものに加えて、実は「心構え」が非常に重要と言われています。では、コミュニケーションが上達するために必要な心構えとは一体何なのでしょうか。コミュニケーションに向き合っていくための根本的であり、かつ大切な考え方が何なのかについて一緒に考えていきましょう。 ここで1つ事例をご紹介します。実は、これは私自身の経験談です。 15年程前に東京から大阪に出張する機会がありました。新幹線での移動だったのですが、混んでいる場合は出入りがしやすい「通路側の席」、空いている場合は景色を楽しむために「窓側の席」にしようと考えていました。緑の窓口に行き、当時思いついた問いかけは『16時発新大阪行きの新幹線は空いていますか』でした。もし、「空いています」という答えが返ってきたら「窓側」で、「混んでいます」と答えが返ってきたら「通路側で」とお願いをしようと考えていました。職員の方は満面の笑みで「はい、まだ充分空いていますよ。あと300席残っています」と答えてくれました。しかし私は300席という情報を聞いて、「通路側」か「窓側」のどちらにすれば良いのかの判断が出来ませんでした。 このエピソードから皆さんにお伝えしたいことは、「コミュニケーションは受け手が決める」ということです。話し手が伝えたかったこと、聞きたかったことというのは勿論あるわけですが、「どう伝わったかが全て」ということです。今回の事例も職員の方は「空いているかどうか」という問いかけに対して「300席」という具体的な数値も据えた満点の回答をしてくれたと言っても良いかもしれません。自分の考える結果が得られなかった原因は相手にあるのではありません。「自分の発した問いかけに問題があったのではないか」というスタンで振り返るということが重要です。 もしくは、一生懸命説明しても相手が分からなかったという風に言ってしまうこともあるかもしれません。このような時に、伝わらない理由を「相手の理解力が無いから」と相手に求めてしまうこともあるでしょう。実際にその話を理解するための充分な知識を相手が持っていないということも考えられますが、その知識を持っていないという前提も踏まえて自分が話を出来なかったという方向で振り返られるかどうかが大切です。 「コミュニケーションは受け手が決める」と考えると、悩ましい状況が発生してしまいます。それは、「伝える相手によって受け止め方が変わってしまう」ということです。同じことを伝えたとしても、同じ結果が得られない可能性があるということです。つまり、正解が一つに決まらないということになりますし、逆に「正解がない」という風に言うことも出来るかと思います。だからこそ、コミュニケーションは難しいのです。 この「正解がない」という状況にどう向き合っていくのかが、実はコミュニケーションの上達を分けるポイントです。正解がないのであれば、あれこれ考えるのは止めてしまおうと考えてしまうか。もしくは、正解がないなりに一生懸命考えてコミュニケーションに臨もうとするか。どちらの方のコミュニケーションが上達していくのかは明白です。 最後にビジネスシーンにおいて「伝える」ということの意味を少し考えます。自分の考えていることを相手に伝えることは重要です。何故ならば、自分一人だけで何かを成し遂げることには限界があるからです。ただ、自分が考えていることを単に伝えるだけでは、残念ながら相手には受け止めてもらえない可能性があります。そこで必要となってくるのは、伝えようとしている内容が相手にどのように受け止められる可能性があるのかを事前にしっかりとイメージしておくということです。加えて、相手にどのように伝えれば良いのかをしっかりと考え、「分かりやすさ」という工夫を施していく必要があります。伝えたいことを「相手起点」で見直し、そして「分かりやすさ」という包装紙に包んで相手に対してメッセージという名の贈り物が届けられているか、そんな意識でコミュニケーションを捉えるようにしていくと良いのではないかと思います。 では、今日のまとめです。 「コミュニケーションは受け手が決める」という絶対原則を忘れないでください。そして、正解がないからこそ努力を怠らないこと、メッセージという名の「ギフト」が届けられているかという意識を持って、コミュニケーションの場に臨むようにしていってください。
前回、九州大学では昆虫を研究対象とした研究者が日本で最も多く、昆虫の研究が盛んに行われていることについて話しました。そして今週末から開催される「ふくおか大昆虫展 in ももち 世界の昆虫と九州大学の研究」について話しました。今日はそのセンターで事業化に向けて研究開発している研究テーマについて話します。九州大学 昆虫科学・新産業創生研究センターは、名前にあるように昆虫科学に基づく新たな産業を創生することを目標の1つに掲げています。昆虫で新たな産業はなかなかイメージしづらいと思いますが、例えば、九大発の昆虫ベンチャーとしてKAICO社という会社があります。前回の放送で九大の蚕研究は百年の歴史があると話しましたが、KAICO社は九州大学で開発された蚕の研究シーズを基に、医薬品の原料など非常に希少価値の高い有用な物質を蚕に生産させる事業を展開しています。蚕を昆虫工場として活用しています。 この他に、以前この番組でお話した昆虫食、昆虫飼料に関する研究も行っています。昆虫センターは福岡県嘉麻市と連携協定を結んで嘉麻市の放置竹林問題を昆虫食や昆虫飼料で解決しようという計画をしています。その計画とは食用の昆虫としてカブトムシを用いることです。カブトムシというのは実は竹をエサ資源として成長することが出来ます。なので、嘉麻市で困っている放置竹林の竹をカブトムシのエサとして使用します。竹は他の木材に比べて非常に成長が早いので、計画的に整備しないとどんどん増えていきますが、これを逆手にとって竹資源を使ってカブトムシを育て、育ったカブトムシを新たなタンパク源とする研究を進めています。カブトムシクッキーもすでに九大内で作っていて、蚕クッキーに勝るとも劣らずおいしいです。 最後に紹介するのは、虫を虫で防除する生物的防除の研究です。虫の世界にも天敵という存在がありまして、これを活用して、いわゆる害虫を補食したり害虫に寄生したりする虫をつかって害虫駆除をする研究などもされています。ですので、化学的な農薬を使わないので環境負荷が低いというのがこの生物的防除の特徴です。この他にも事業化を目指して進めている研究がまだまだあり、今後昆虫科学に資する新たな産業創出を目指していきます。前回話したはさみ虫の羽根も事業化に向けて研究を進めているなど、いろんな昆虫の研究シーズが九州大学では行われています。 前回の放送に続き九大昆虫研究からのお知らせです。今週の金曜日、7月14日~8月27日まで福岡市ももちのTNC会館外のエントランスホールで九州大学昆虫・科学新産業創生研究センター、総合研究博物館らが主催となって「ふくおか大昆虫展 inももち 世界の昆虫と九州大学の研究」を開催します。九州大学が保有する昆虫標本は400万点以上にものぼり、大学が単独で保有する数では世界トップクラスです。この中からおよそ5000頭程度、カブトムシ、クワガタ、蝶やナナフシなどが展示されます。きらびやかな昆虫からめずらしい昆虫まで普段みることができない昆虫が昆虫展では見ることができます。ぜひお越しください。期間中は週末にイベントも開催しています。昆虫の世界で超有名人な九大総合博物館 副館長の丸山先生が直接相談にのってくれる子供昆虫相談室、大学で行っているような本格的な標本作りを実際に昆虫を使って、ハンズオン形式で参加者の方に標本をつくってもらう標本教室を行います。あと、九大の蚕を使った繭のクラフトワークです。非常にかわいい物ができます。そして、究極の展開構造機能をもつはさみ虫の折り紙教室、実際にはさみ虫がどんな折りたたみをしているかを折り紙を通して知ることができます。お子さんの夏休みの自由研究の題材としてもぴったりのイベントなので、是非ご家族連れでお越しください。詳細は福岡大昆虫展のホームページをご覧ください。 今日のまとめです。昆虫は長い進化の過程で環境に適応するために様々な特徴、機能を有しており、人間がそこから学ぶことは多くあります。九州大学 昆虫科学・新産業創生研究センターではその昆虫に関する世界最先端の研究を行っており、また、センターの名前にあるように昆虫科学に資する新たな産業の創生に取り組んでいます。今週から開催される「ふくおか大昆虫展 inももち」では九州大学で行われている昆虫科学の研究に触れることが出来ますので是非お越しください。
実は私、九州大学の主たる所属はビジネススクールですが、農学研究員の昆虫科学の新産業創生研究センターの兼任もしていて、そのセンターで開発された研究シーズの社会実装や商業化推進も行っています。今回と次回で昆虫科学の新産業創生研究センターについて、そして今週の金曜日、7月14日から開催されるふくおか大昆虫展 in ももち 世界の昆虫と九州大学のイベントについて話します。実は九州大学には昆虫を研究対象としている研究者が日本で最も多く、40名ほどいます。このセンターは、九州大学の昆虫科学の知を統合して、新たな知の創造を目的として2018年に開設されました。昆虫の研究と言っても、実は色々な切り口があります。古典的なところとしては、分類学や生態学と言われるものです。どんな形をした昆虫が、どんなグループに分類されるのか、どういう生態的特徴、すなわち生き方を持っているのか等です。よく新種発見の報道がありますが、これこそ正に昆虫分類学の領域で昆虫学の王道と言われています。 応用的な研究領域としては、野菜などに付く農業害虫の研究や、蚊やダニなど感染症を媒介する衛生害虫の研究なども行われており、少し変わったところで言えば昆虫の機能を工学的に応用した生物模倣工学という分野の研究も行われています。中々馴染みが無いので少し詳しく話します。ハサミムシはご存知ですか。実はハサミムシには飛ぶことが出来るハサミムシがいます。このハサミムシの羽根は、昆虫界で最もコンパクトに羽根を折りたたむことが出来きます。どれくらいコンパクトかと言うと、閉じた時の17倍の大きさを一瞬にしてパっと広げることが出来きます。その構造は究極の展開構造と称される程で、これを工学的に模倣して、例えば、宇宙で広げるソーラーパネルや小さなところで言えば扇子や折り畳み傘に応用できる可能性があります。 正に生物の考古学という分野も研究領域として九大でやっています。九大昆虫研究の看板の一つに、蚕があります。九大の蚕の研究は100年以上の歴史があり、世界で最も多い800種類にも及ぶ蚕を保有しています。蚕と言っても実は一種類だけではなく色んな種類があります。普通蚕の繭は白いのが一般的ですが、九大が持っている蚕の種類は黄色やオレンジ、ピンク、クリーム色など様々な色の蚕があります。その変わった色の繭に興味を持ったあのエルメスが問い合わせてきたということが過去にあったそうです。 そんな九大の昆虫研究からのお知らせですが、今週の金曜日7月14日から8月27日まで、福岡市ももちのTNC会館1階のエントランスホールで九州大学昆虫科学新産業創生研究センター、総合研究博物館等が主催となったふくおか大昆虫展 in ももち 世界の昆虫と九州大学 を開催します。九州大学昆虫標本もたくさん持っていて、400万点以上にものぼります。これは大学が単独で保有する標本数としては世界トップクラスです。この中からおおよそ5000頭程度カブトムシやクワガタ、蝶々やナナフシなどが展示されます。きらびやかな昆虫から珍しい昆虫まで、普段見ることがない昆虫がこの昆虫展で見ることが出来ます。 この展示会は様々なコーナーを設けていますが、その中にGの編というコーナーがあります。ゴキブリのGです。世界中には色んなゴキブリがいますが、この昆虫展では体重が最大で35グラム程ある世界で最も重たいと言われている、主にオーストラリアの熱帯地域に生息するヨロイモグラゴキブリというゴキブリや、世界最大級の体長が10cmあるオオメンガタゴキブリというゴキブリを生きたまま展示しています。日本のゴキブリとは違った色や形をして、いわゆるゴキブリ感はあまりないので、是非生でご覧になってください。 先ほど話した九大が誇る蚕も生きたまま展示しています。あと、開催中の7月23日は九大の昆虫研究者等によるシンポジウムも催されます。昆虫に関する最前線の研究、昆虫食や新種の発見などを分かりやすく話します。九大でどんな昆虫研究が行われているか分かるイベントとなっております。子供はもちろん大人も楽しめるイベントになっているので、是非ご家族連れでお越しください。詳細はホームページをご覧ください。 今日のまとめです。九州大学は、日本でも有数の昆虫研究が盛んな大学です。昆虫を対象とする研究は実に様々ですが、九州大学では古典的な分類学や生態学、害虫の研究、蚕の研究、昆虫の機能、工学的に応用する生物模倣工学など幅広く行われています。九州大学はまた世界トップレベルの昆虫標本を保有しており、それらの一部を展示する福岡大昆虫展が今週から開催されますので、是非お越しください。
今回も実用的消費と快楽的消費について話します。快楽的消費というものは選択肢がたくさんあるとより満足度が高まるというこのことについて話したいと思います。快楽的消費と実用的消費、この中でも快楽的消費というものは、何か予め決められている種類の限られているものから何か選んで消費するというよりかは、沢山ある選択肢の中から選んで購入出来る方が消費をしたときの満足度が高くなるということが知られています。 この現象を明らかにした研究はいくつかあり、代表的なものとしてロンドン大学のビジネススクールのボッティと、シカゴ大学ビジネススクールのマッキルの2人の研究者による2011年の実験があります。とある大学の学部生およそ100人を対象にスパのマッサージの無料券を使う状況を考えてもらいました。無料券を使えるスパは評判の良いプロフェッショナルなマッサージサービスが受けられるものです。そしてマッサージの無料券を使う状況に応じて2つのグループに分けました。1つ目のグループは、マッサージの無料券を使う状況として自分自身の体に何か痛みがあって、肩が凝っている、お医者さんから勧められてマッサージ券を使うという状況です。この状況というのは体の痛みを治すといういわゆる実用的な消費でマッサージを受けるという状況です。もう一つのグループは、その学期中に一生懸命大学で勉強して、そのご褒美にリラックスすることを目的にマッサージを受けるという状況を考えてもらいました。これは快楽的な消費としてマッサージを受ける状況と言えます。そして、受けられるマッサージのサービスについて選択肢がある状況と選択肢が無い状況を用意しました。実験の結果として、それぞれの実験の参加者が期待する満足度というものは、快楽的消費の場合には選択肢のある状況のほうが満足度が高くなり、実用的消費の状況では選択肢があってもなくても満足度はあまり変わりませんでした。 ボッティとマッキルは別の実験も行っています。美術館に行く状況を被験者に想定してもらい、実用的消費の状況として、卒業論文を書くために資料集めとして美術館に行くというシチュエーションのグループと、もう一つは快楽的消費の状況として旅行の観光客として美術館に行くシチュエーションの2つをグループに分けて用意しました。その上で自分が閲覧出来る美術のジャンルを自分で選択出来る状況と選択出来ない状況の2つを用意しました。その結果としては、先程のマッサージの実験と同じで快楽的消費の状況、つまり旅行の観光客として美術館に行く状況の下では選択肢が与えられている状況の方が満足度が大きくなりました。この実験結果のように、目的がはっきりしている実用的な消費に比べて、快楽的消費をする状況は選択肢が用意されて選べる楽しみがあるかどうかによって満足度が大きく変わってきます。 例えばスターバックスに行ったとします。もしスターバックスに行った目的がただ単に眠気を取り去りたくてカフェインを補給するためだったら、コーヒーの選べる種類が多くてもそれほど満足度は高くなりません。そうではなくて、気分をリフレッシュさせたい、何かゆったりした席でコーヒーを楽しみたいといった快楽的消費をするつもりでスターバックスに行くと、色んな種類のコーヒー、ドリップコーヒーだけではなくてアメリカーノやカフェラテなど選べるものが沢山ある方が満足度が高くなります。理由としては、快楽的消費は何か楽しみを得るために行うからです。目的が明確である実用的な消費よりも、自分が何か選択出来るということが更なる満足に繋がるからです。 こういった発見から言えることは、快楽的商品には沢山の選択肢を用意してあげましょうということです。例えば、スポーツカーには色んなオプションを選択肢として用意してあげた方がお客さんの満足度がグッと高まりますし、或いはイタリアンやフレンチのコース料理でも、メイン料理やデザート、ワインはある程度選択肢を用意してあげたほうが、お客さんの満足度をグッと高めることが出来きます。最近、パナソニックのレッツノートというノートパソコン、メーカーとの直販でCPUやメモリの性能をカスタマイズ出来るというだけではなく、鍵盤のカラーを色んな種類に変更できるようになっています。このレッツノートはビジネスマン向けの実用的なノートパソコンですが、その中でもかなり高価な機種でもあるので、快楽的な側面を上手くマーケティングに盛り込んでいる例だと言うことが出来きます。 今日のまとめです。本日は贅沢品をはじめとする快楽的商品にはたくさんの選択肢を用意してあげた方が顧客の満足度が高まるということと、その理由について話しました。これまで述べてきましたように、快楽的消費と実用的消費の特性はかなり異なりますし、それに応じてマーケティングを変えていく必要があります。もし自分達の会社が商品やサービスを開発したり宣伝したりする状況に置かれたときに、その想定する消費タイプは実用的消費なのか或いは快楽的消費なのかをまず明らかにした上でそれに基づいてマーケティング戦略を作っていくと効果的だと言えます。
前回と前々回と2回にわたってマーケティングにおける2つの消費、実用的消費と快楽的消費について話をしました。実用的なことに重きをおく実用的消費なのか、それともそれを買うことによって楽しい、嬉しい、心地よいといった気持ちの面に訴えかけるような消費である快楽的消費なのかという話でした。 今回も引き続き実用的消費と快楽的消費について話をします。その中でもセルフライセンシング効果という言葉がありますので、それについて話をします。前回お話したように、実用的消費に比べて快楽的消費って消費者にとってはとても魅力的です。しかし、購買の正当化がしにくくて、罪悪感を持ちやすいというふうな傾向が見られます。これは快楽的消費を行うブレーキになってしまうので、ブレーキを外すための正当化をしてあげる必要があります。正当化をしてあげる一つの方法は快楽的消費の対象となるものに対して何か実用的消費の側面を強調してあげるということがあります。例えば、シャネルなどの高級なバッグは快楽的消費の典型的な例です。それに対して実用的な側面を強調してあげる、例えば、確かにこの高級バッグは高いけれど、高級なだけあって作業も丁寧で材料もいいから長持ちしますと。長い間使えるから長期的な目で見るとお得ですという説明をしてあげるといったことが考えられます。 他にも何か正当化がされていると、快楽的消費を行いやすくなります。例えば、何かきつい作業をしたり、大変な仕事を終えたりして、自分へのご褒美が必要だというふうに感じるといった時です。実をいうと自分へのご褒美が必要だなというふうに考える、こういった状況のことをマーケティングの用語でライセンシング効果、或いはセルフライセンシング効果と呼んでいます。ライセンシング効果というのは人にとって快楽的消費をするときの一種の免罪符みたいなものです。もう少し俗っぽい言い方をすると、何か自分にとって大変なことをしたときに、自分を甘やかすということを正当化するということです。例えば、ハンバーガーとフライドポテトを注文した時に、その代わりドリンクは0キロカロリーのコーラ、或いはお茶やお水といったものを選ぶというものもライセンシング効果の例です。ドリンクは低カロリーのものを選んだから、他のものは少し脂っこいものを選んでもいいと正当化しています。 このライセンシング効果については沢山の研究がされていますが、その中でも代表的なもの、カーンとダールという2人の研究者の2006年の研究を紹介します。アメリカ東部の学部生を対象にした実験で、100人程の被験者を2つのグループに分けました。半分は恵まれない子供たちに塾のような教育サービスを提供してあげたり、或いは環境保護活動をしたりするというボランティア活動に参加してもらうということを想像してもらいました。もう片方は特にボランティア活動も何もしないという状況を想像してもらいました。その後、被験者の手元にある50ドルで掃除機とデザイナーによるおしゃれなジーンズ、どちらかを選んでもらいました。掃除機は実用的商品、おしゃれなジーンズは快楽的消費だと被験者がみなした商品でした。その結果ですが、ボランティア活動の参加を特に考えなかったグループは82%の被験者が掃除機を選びました。それに対してこれからボランティア活動に参加するという状況を想像してもらったグループは、6割近い57%がデザイナージーンズを選びました。つまり、ボランティア活動に参加するということを想像してもらっただけで、快楽的消費の商品を選ぶ確率が2倍になったということです。このように、自分が何かいいことをした、或いはこれから何かいいことをすると意識をするだけで、被験者は快楽的消費をより積極的にするようになりました。 このようなライセンシング効果にはマイナスの側面もあります。チョウとヤンとワンという台湾の3人の研究者が2011年に行った研究で、マルチビタミンのサプリメントを服用してもらうという状況で、その被験者たちの行動を見ました。そうすると、マルチビタミンのサプリメントを服用した被験者の方が服用しなかった被験者に比べて運動量が少なくなり、あまり健康に良くない食事や生活をする傾向が増えたそうです。これもセルフライセンシング効果が働いた例で、サプリメントを摂っているから多少不健康な生活をしても大丈夫という種の免罪符になってしまったようです。別の研究で、シングルナーとシュレーゲルミルフィーという2人の研究者による2017年の研究がありますが、こういったライセンシング効果の大きさというものは文化によって違いが見られるということを確認しています 今日のまとめです。今回はライセンシング効果について話しました。努力したり、或いは良い行いをしたりした時には、消費者は自分へのご褒美として快楽的消費をするということが正当化されます。それによって快楽的な消費を促進するということが明らかにされています。これは高級品などのマーケティングだけではなくて、社会的に望ましい行動をとってもらうにはどうすればいいのかなどを考える上でも良いキーワードだと思います。
前回はChatGPTの凄さ、その一端を紹介しました。FM福岡の経営企画室が考えるようなこと、結構レベルが高い回答が返ってきました。このようなChatGPTが広がってくると、いわゆる経営企画室的な仕事はひょっとすると無くなってしまうかもしれません。なにせ相手は世界中の情報を分かっていて、そこから合理的に考えられるポイントを瞬時にまとめる力を持っています。ではこのChatGPTが普及した世界で、ビジネスパーソン特にホワイトカラーはどんなことに注意をしていけば良いのか、それを今日は考えてみたいと思います。まず、手始めにChatGPTご本人に聞いてみたいと思い、こんな質問を入れてみました。ChatGPTが普及した世界で、ホワイトカラーのビジネスパーソンが注力すべき仕事はどう変わるのか。その回答用意しています。 ChatGPTが普及した世界では、ホワイトカラーのビジネスパーソンが注力すべき仕事に変化が見られるでしょう。以下にその変化についていくつか示します。人間らしいスキルの強化。AIが情報収集や一部の業務を効率化するためビジネスパーソンは対人スキル、リーダーシップ、チームビルディング、交渉力、感性や直感を活用した意思決定など、人間が持つ独自のスキルをより一層磨くことが求められます。戦略的思考力の向上。ChatGPTがデータ分析やレポート作成を助けることで、ビジネスパーソンはより戦略的思考に時間を割くことができます。市場分析や競合状況の評価、イノベーションの創出、事業戦略の策定など、会社の成長や競争力を高めるための戦略を立案する能力が重要になります。柔軟な創造力の発揮。AIが一部のクリエイティブ業務をサポートすることで、新しいアイデアや斬新な解決策を生み出すことができる柔軟な想像力が求められます。ビジネスパーソンは異業種とのコラボレーションや新しい技術の活用によって、新たな価値を創造する能力を身につけることが重要です。プロジェクト管理能力の向上。ChatGPTがタスク管理を効率化することで、ビジネスパーソンはプロジェクト全体の進行やチームのリソース管理に専念できます。プロジェクト管理能力を向上させ目標達成やチームの生産性向上に注力することが重要です。継続的な学習とスキルアップ。AI技術は日々進化しており、ビジネスパーソンは新しい知識や技術を継続的に学ぶことが求められます。自己啓発やスキルの修得、業界のトレンドに敏感になることで、競争力のあるポジションを維持できます。 以上です。ChatGPTの回答の1つ目にあったのですけど、人間らしいスキルとありました。最近NHKなどでも時々AIがニュース原稿読みますが、やはり伝わってこないです。人間が読んだ方が、圧倒的に伝わってきます。今のChatGPTの回答を振り返ってみると5点ほど指摘があったのですね。人間らしいスキルの強化。戦略的思考力の向上。柔軟な想像力の発揮。プロジェクト管理能力の向上。継続的な学習とスキルアップ。確かにそうだと思います。ChatGPTは実は、ホワイトカラーだけではなくて、僕のような教員・教師にとっても大変大きな脅威です。ChatGPTと同じような内容しか話せない教師はたぶん必要なくなってくると思っています。ですので、ChatGPTの回答を踏まえて、じゃあその上に何を追加して教えられるのか、何を伝えていくことができるのかが教師・教員にとっても大変大事になってくると思っています。ChatGPTを触っていて思うのは、ChatGPTの能力をあえて一言で言うと、あらゆる課題に対して教科書に載っているような模範解答、これを示す力だと思います。すなわち多くの人が納得しそうな無難な答えを出してきます。従って、模範解答的なことしか解答できない教師やホワイトカラーは、なかなかChatGPTに敵わなくなってしまうかもしれません。ではこれからの時代一体何が必要なのか、何が大事になるのか、皆さん一体どう考えるでしょうか。僕は、それはらしさや、ならではだと思っています。これからの時代、僕達は模範解答を踏まえて、それに自分らしさや自分ならではのものをいかに追加できるのか、付加価値できるのか、それが大事になってくると思います。それは内容に関してだけで良いし、実行の方法でも良いと思うのです。ChatGPTは会話はできますが、実行はできません。ですので、自分らしいリーダーシップを発揮しながら仲間をまとめて、仲間と一緒に自分ならではの成果を出していくことが今後のビジネスパーソンの目指す姿になると考えています。更に言えば、ChatGPTと競い合うのじゃなくて、使い込む立場になることも同時に大事じゃないかと思っています。新しいAIのChatGPTと競い合うのではなくて、個性を付加して独立性を出す。ChatGPTを使う側に立つ。これからの時代我々は何を目指していくべきか、是非皆さんも考えていただきたいと思います。
今回は今話題のAI、ChatGPTを取り上げます。改めて説明を少しすると、皆さんご存じの通り、AIを使った高度な会話型のチャットボットです。AIの力をうまく使いながら、自然な文章を作ってユーザーとの会話をリアルタイムに行います。本当に様々なトピックに対応できて、質問に答えたり、情報を提供してくれたりします。そのため、我々はビジネスや日常生活の様々な場面で、効率的なコミュニケーションをサポートすることに加えて、情報収集とか問題解決まで助けてくれます。 またその文章が熟れているのです。僕も結構実際使っていますが、本当に使いやすくて、難しいプログラム言語は全く要らないです。本当に便利です。今回、なぜこのテーマを選んだかというと、このChatGPTが我々、特にビジネスパーソンにどんな影響を与えそうかを考えてみたいからです。このChatGPTがどんな影響を与えるのか、まずこれをChatGPT自身に聞いてみたいと思います。これからお話しする内容は、僕がChatGPTに打ち込んだもので、ChatGPTがビジネスパーソンに与える影響について、1分間で話せる原稿を作って下さいとお願いしました。その返答をこれから読みます。タイトルも付いていて、ChatGPTとビジネスパーソンの未来です。 こんにちは、本日はChatGPTがビジネスパーソンに与える影響についてお話します。これは私達の働き方を大きく変えるテクノロジーです。まずChatGPTは情報収集を効率化します。次にコミュニケーションの改善です。多言語対応のChatGPTは言語の壁を越えて世界中のクライアントやパートナーとスムーズにコミュニケーションを取ることが可能になります。また、ChatGPTはクリエイティブな業務をサポートします。プレゼンテーションや報告書の作成が苦手な人でもAIがアイデアを提案し、効果的な文章を作成することで、質の高い生成物を短時間で作成することができます。最後に効率的なタスク管理です。ChatGPTを使って、スケジュール管理やタスクの優先順位付けを簡単に行います。これによりビジネスパーソンは集中すべきタスクに専念できるようになります。まとめると、ChatGPTは情報収集の効率化、コミュニケーションの改善、クリエイティブ業務のサポート、そして効率的なタスク管理によってビジネスパーソンの働き方を劇的に変える力を持っています。これは私達の未来において、より効率的で生産性の高い働き方を実現するための大きなステップです。 以上です。ちょっと長いという感じはしますが良い出来です。もうひとつ、FM福岡の社員になり代わって、こんな質問をしてみました。『AIがラジオ放送に与える影響を教えて』です。回答読み上げます。 AIがラジオ放送に与える影響は多岐に渡ります。番組制作の効率化。AIを用いた音声合成技術や音声編集ツールが番組制作を効率化します。自動編集や音楽の選択、効果音の追加など一部の作業をAIが担当することで、制作スタッフがよりクリエイティブな部分に集中できるようになります。音声認識と自動字幕生成、高度な音声認識技術によりラジオ放送の内容をリアルタイムで文字起こしし、自動字幕生成が可能になります。これにより聴覚障害者や異なる言語のリスナーにもアクセスしやすい放送が提供できるようになります。コンテンツのパーソナライズ、AIがリスナーの好みや嗜好を分析し、それに基づいて番組や音楽を推薦することができます。ターゲット広告の最適化。AIを活用してリスナーのデモグラフィックや興味に基づいたターゲット広告を提供することが可能になります。インタラクティブなコンテンツの提供。AIを活用したインタラクティブなコンテンツが開発され、リスナーとのエンゲージメントが向上します。例えば、リスナーが自分の声で質問やリクエストを送信できるように対話型の番組が実現されるかもしれません。データ分析による番組改善。AIを用いた分析によりリスナーの嗜好やリスニングパターンを把握し、番組改善に活かすことができます。これにより放送局はリスナーのニーズに適した番組を作ることができるようになります。 以上です。全部で6点ほど、ChatGPTが教えてくれました。1番目が番組制作の効率化。2つ目が音声認識と自動字幕生成。3番目がコンテンツのパーソナライズ。4番目がターゲット広告の最適化。5番目がインタラクティブなコンテンツの提供。そして最後の6番目がデータ分析による番組改善でした。これを見て僕が思ったことは、ラジオ局の経営企画室の仕事・役割を結構果たしているのではないかということです。どうやら我々はこれまでと本当に大きく変わった異なった世界に入りつつあるように思います。 今回は話題のChatGPTの能力の一端の紹介でした。次回は、我々ビジネスパーソンはChatGPTと共存するために、今後どんなことに気を付ければ良いのか、それを考えてみたいと思います。
これまで「アフターコロナ」についてお話ししています。まず、良質な睡眠と食事で生活のリズムを整えること、そして「考え方」も整えていこうということで、前回は「自己効力感」の高め方についてお話ししました。今日は少し視点を変えて、最近よく耳にする「ウェルビーイング」や「幸福経営」が「自己効力感」と実は密接に関わっているということについてお話しします。 「ウェルビーイング」とは、簡単に説明すると、肉体的にも精神的にも社会的にも全てが満たされた状態のことを指します。まさしく理想的な状態です。もう少し分かりやすく言うと、「幸せ」ということなのですが、「ハピネス」とも少し異なり、ハピネスが一時的な幸せも含めて言うのに対して、「ウェルビーイング」とは、こうした肉体的、精神的、そして社会的にも満たされた状態が長期的に続くことを意味します。 非常に曖昧な言葉のようにも思えてしまいますが、「ウェルビーイングの実現」と関連性の深いものとして、「ポジティブ心理学」という領域があります。これは1990年代に日本に入ってきたのですが、当時の日本はバブル崩壊後で絶不調だったこともあり、「ポジティブに生きよう」という考え方は受け入れられませんでした。しかし、最近になり、こういった「ウェルビーイング」に関する話も含めて、「ポジティブ心理学」が脚光を浴びています。 「ポジティブ心理学」とは、アメリカのマーティン・セリグマン博士が提唱したもので、5つの要素が大事だと言われています。 1. ポジティブ・エモーション 嬉しい、楽しい、感動したなどのポジティブな感情を持っているかということ。 2. エンゲージメント 時間を忘れて積極的に没頭できることを持っているかということ。 3. リレーションシップ お互いに助け合うような人間関係を持っているかということ。 4. ミーニング・アンド・パワーポーズ 自分の人生に意味や目的を見出せているかということ。 5. アチーブメント 成功体験などによって達成感を得られているかということ。 ここに「自己効力感」が出てくるわけですが、こういった要素から見ても一時的な何かによって得られる満足感ではなくて、持続的な幸福度を表すものだということが分かるのではないかと思います。 今、この「ウェルビーイング」は、社会はもちろん、企業においてもその重要性が指摘されています。なぜ利益を追求する企業が、「ウェルビーイング」に注目しているかというと、ウェルビーイング(幸福度)が高いと仕事の生産性も高くなるということが、世界的な調査によって示されています。例えば、ウェルビーイングが高い営業職の方の売り上げが30%程アップする、仕事のスピード感も作業内容によっては3倍ほどの差が出るという話があります。やはり幸福度の高い人は、成果を上げやすいという調査結果が出ているわけです。こういった点からも今、企業でウェルビーイングが注目されています。 そして、「多様性を受け入れよう」という社会的な情勢もあり、「働き方改革」という言葉もよく聞かれるようになりました。そうした面も考えると、「幸せに働いてもらうためにはどうするか」ということを企業としては注目せざるを得なくなっているということではないかと思います。 日本ではまだ聞き慣れない言葉ですが、「CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)」という役職が欧米などでは導入され始めています。企業において、そういう役職ができるほど働いている人達の幸福度が、企業にとっても利益に繋がっているということです。幸せに働ける環境があると、その会社のことが大好きになりますし、好きな会社のためには自分達も一生懸命がんばろうという気持ちになります。そして、その中だからこそ「自分はできる」と感じて自己効力感も高まり、やる気が高まるという好循環が生まれます。双方にとってwin-winの関係になり、世界でもウェルビーイングが注目されているわけです。 ところで、「世界の幸福度ランキング」というものがあります。フィンランドなどの北欧諸国が高い成績を収めている一方で、日本は何位かご存じですか。 日本は幸福度ランキング54位でした。日本よりも上位にある国の中には、日本よりも経済力も低く、税金も高い国が多くあります。では、なぜそれでも日本よりも幸福度が高いのかと言うと、払った分だけ社会保障等の制度が充実していて、自分達の税金が何に使われているのかが明確で、税金の支払いがポジティブに受けとめられているからだそうです。日本の幸福度ランキングの低さの理由として、日本は自分の人生をコントロールできるという感覚が低いと言われています。お金や地位や名声があっても、逆にそれに縛られて思うように生きていけなければ、幸せを感じることはできません。何もかも投げ打って自由に生きていきたいと思うこともあるわけです。つまり、必ずしもお金や地位など、一般的に幸せと思えるようなツールが本当の幸せに結び付くとは限らないということです。そこには、やはり「自分でできる」など「コントロールできる」「自分が関与できる」という『自己効力感』が関係しています。 ここまで「アフターコロナ」の話と絡めて、「自己効力感」という言葉を説明してきましたが、こうして見ていくと、これからの人生を幸せに生きていくためにも、やはりこの「自己効力感」は大きなキーワードの1つになってくるのではないかなと思っています。